産業IoT(IIoT)のコンセプトを打ち出して、製造業の情報化を先導していたはずの米ゼネラル・エレクトリック(General Electric:GE)が苦境に陥っている。2017年12月期は、58億米ドルの最終赤字に沈んだ。そして、2017年8月に就任した前CEOのジョン・フラナリー氏は、たった1年で更迭された。主力事業である火力発電機器事業が脱化石燃料の影響を受けるなど、同社ビジネスの周辺に強烈な逆風が吹いていたのは確かだが、コングロマリット企業の経営の難しさを改めて感じさせる状況になっている。
今の同社は、かつて同社自身が実践し、多くの日本企業がまねした「集中と選択」を、再び行う必要が出てきている。新CEOとして2018年10月1日に着任したローレンス・カルプ氏は、根本的な事業改革、リストラに着手すると明言している。そして、同社を成長に導くと信じられていたIoT関連事業も、リストラ対象として挙げている。
GEが近年注力してきたIoTプラットフォーム「Predix」のビジネスは、どうやら思惑通りには進んでいなかったようだ。Predixは、デジタルツインと呼ぶ、製造業の現場に置く機器の稼働状況を映すコンピューターモデルを活用する仕組みである。GEは発電設備や航空機のエンジンなどでの成功を基に、さまざまな応用分野へと全方位展開すべく動いていた。ところが、応用が広がる気配が見えなかった。カルプ氏は、Predixのビジネスを得意分野に関連した顧客(航空業界や電力業界)に絞っていくと言っている。
同社に限らず、多くの企業がIoT関連のビジネスを育てようとしている。IIoTのような時代を先導するコンセプトを出しながら、思い通りの実践ができなかった同社からは、多くの教訓が得られることだろう。そこで今回は、同社のIoT関連ビジネスの挫折を他山の石とするための議論をした。最初の回答者は、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。同氏は、GEの産業IoT戦略の根幹部分に内包していた誤解をえぐっている。
アーサー・D・リトル(ジャパン) パートナー
