これまでの半導体業界や電子業界の多くの企業が、米Intel (インテル)社の一挙手一投足に注目して、自社の技術開発や事業を考えてきた。同社は、半導体業界の中で常に強烈な輝きと影響力を放ち、さらなる変化と成長を求め続ける特別な企業だった。しかし、その権威と先導力に陰りが見え始めている。
足元のインテルの業績は、堅調そのもの。しかし、同社製品の応用市場やそこで競合する企業や技術の動きを見ると、とても安心していられるような状態ではない。かつてのパソコン(PC)向けCPUのような圧倒的強さを持つビジネスの柱があるわけではない。PC、データセンター、IoTなどに向けたCPU、新型メモリー、自動運転向けチップ、モデムチップ、FPGAなど多種多様な応用に向けた製品を提供している状態だ。それぞれは成長が期待される市場ではあるが、同社が力強く新市場を切り開いている構図ではなく、とても横綱相撲を取れる状況ではない。
安定した研究開発投資と設備投資に裏付けられた先進的チップのIDM(垂直統合)型ビジネスでの強みも揺らいでいる。2018年1月には同社製CPUで深刻な脆弱性が発覚し、製品に対する信頼が失墜した。さらに、10nmプロセスの立ち上げの遅れによって、新型CPU登場をあてにしていた多くの企業の計画変更と失望を招いた。Moore(ムーア)の法則を今後、20年、30年と継続させることはさすがに困難であり、自社で先端ファブを持つ価値も疑って考える必要があるかもしれない。
今回のテクノ大喜利では、インテルが特別な半導体メーカーであり続けるための方策を議論した。最初の回答者は、野村證券の和田木哲哉氏である。同氏は、20年後にも同社が輝き続けるための奇策を提案している。
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
