「ドラゴンクエスト」など、キャラクターを育成しながら冒険するロールプレーイング・ゲームには、キャラクターのステータスを決める方向性の異なる2軸の要因がある。1つは、経験値を蓄積して高めるレベル。もう1つは、特徴的な技や装着できる装備品などを決める職業である。このうちレベルは、がむしゃらに戦えば上昇する。一方、職業は、かなりプレーヤーの戦略性が問われる要因だ。1つの職業にこだわり続ければその道を究められるが、一から出直すことを覚悟して、幾つかの職業を経験すると、より強力な特技を覚え、強力な武器を装備できる上級職になれるからだ。
2019年4月1日から、働き方改革関連法が施行された。その内容は、有給休暇取得の義務化や残業時間の罰則付き上限規制など、働く人の休む時間を増やすものだ。これは、働く人の健康維持を第一に考えて導入されたことは言うまでもない。しかし、その一方で、生まれた余暇を働く人が自分の価値を高めるために活用してほしいという期待感も込められているのだという。日々の仕事に忙殺される状況では、業務に直結すること以外の知識やスキルを身に付ける余裕はない。がむしゃらにレベル上げに励むだけだ。しかし、自由な時間を活用すれば、転職はしないまでも、自分の新たな可能性を開くことができるのかもしれない。私たちは今、自分の価値を高める戦略をあらためて熟慮すべき時期に来たのではないか。
電子産業やIT産業、自動車産業など、技術革新が進む事業環境の中で、人材の流動性が低い日本企業、さらには技術者個人が、どのように振る舞い、備えたらよいのか議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、人材活用を考えるシンクタンク、パーソル総合研究所の鎌田陽子氏である。同氏は、社会人教育は、個人の価値を高めるだけでなく、会社の競争力を高めるために欠かせないことを指摘。企業側が、戦略的に人材の価値を高めていくための方策を提言した。
パーソル総合研究所 シンクタンク本部リサーチ部研究員
