米中貿易摩擦など単なる景気変動とは別の要因が、世界経済の行方を大きく左右するようになった。新たな世界経済の枠組みを探る時代に突入した感もある。大きな潮流の中で、近未来の日本の産業界は、いかなる強みを発揮し、どのようなポジションに就くことになるのだろうか。こうした状況下、日本の国際競争力に関する気になる発表があった。
2019年5月29日、スイスの有力ビジネススクールである国際経営開発研究所(IMD)は、世界の国や地域の国際競争力についてランキング化した「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)」2019年版を発表した。日本の総合順位は30位と、前年より5つ順位を下げ、1989年の当会開始以来、過去最低となった。ちなみにアジアでは、シンガポールと香港が、米国(3位)を抑えて総合1位と2位にいる。さらに、中国(14位)、台湾(16位)、マレーシア(22位)、タイ(25位)、韓国(28位)も日本より上位に位置づけられている。この結果を見る限り、今の日本の国際競争力について、とても楽観できる状態ではないように思われる。
テストや通信簿の結果を真摯に受け止めて、的確な対策を施せば、学力の向上に大いに役立つ。同様に、国際競争力のランキングも単に一喜一憂するのではなく、その内容を精査すれば、国際競争力をさらに高めるための糸口をつかむことができるだろう。今回のテクノ大喜利では、国際競争力ランキングを読み下し、そこから得られる教訓について議論した。最初の回答者は、IMDの世界競争力年鑑の編集協力者である三菱総合研究所の酒井博司氏である。同氏は、IMDのランキングにおいて日本が順位を下げた要因と、これから競争力を高めていくための注力点について解説した。
三菱総合研究所 政策・経済研究センター 主席研究員
