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 電子立国を自称した1980年代の日本では、日米半導体摩擦による米国の圧力に屈してからは、半導体メーカーのほとんどが坂道を転がるように壊滅した。韓国や台湾などの新たに台頭してきた企業との競争にビジネス戦略の不的確さで敗れた、コンピューターの民生化の進展やネットの普及など新たな市場ニーズに適応できなかったといった、個々の敗北理由はあるのだろう。しかし、今振り返ってみれば、要するに時代の変化に対応もしくは対抗し切る力が足りなかったのかもしれない。

 そして今、半導体産業を取り巻くビジネス環境は大きく変化しつつあり、日本の半導体産業は、世界をリードする装置材料産業の競争力を維持・強化する方策が不可欠になっている。米中の覇権争いによって世界の電子機器のサプライチェーンが新たな枠組みへと移行することを見据えて、関係企業に及ぶ影響について議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、MTElectroResearchの田口眞男氏である。同氏は、米中の覇権争いによって半導体サプライチェーンが変化したとしても、日本の半導体製造装置、材料の産業は依然として強いとみている。ただし、その強みを維持するためには、新たに適応すべき部分、解決しておくべき課題もあることを指摘している。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
MTElectroResearch 代表
田口 眞男(たぐち まさお) 1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶応義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】世界の半導体サプライチェーンが分断されることで、どのような企業が追い風を受け、どのような機会を得ると思われますか?
【回答】資金力と知恵がある企業は自分を中心に世界を回して競合を振り落とす
【質問2】どのような企業が逆風を受け、いかなる影響を受けると思われますか?
【回答】収入も支出も多い業態で、かつ利益率の低い企業、特殊部品を使うハードで差異化する戦略を取る企業は行き詰まる
【質問3】日本の半導体関連企業には、どのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】サポートのコストが上がるが経営に悪影響は出ない