全4612文字
PR

 米Intel(インテル)CEO(最高経営責任者)のRobert Swan氏は、7月23日に開催された決算発表会で、独自のプロセス技術を立ち上げられない見通しが出てきた場合、必ずしも自前のプロセスにこだわらない方針を明らかにした。これまで、設計と製造を融合させたIDM(Integrated Device Manufacturer)という事業形態にこだわり続けてきた同社が歴史的な岐路に立っている。

 半導体業界にとって、Intelは特別な会社である。特に製造プロセスの開発では長年にわたって同社が最先端半導体製造をけん引する立場にいた。電子業界やIT業界の進歩を裏で支えた「ムーアの法則」の守護者だった。ところが近年、10nmプロセスの立ち上げの相次ぐ後れ、さらには続く7nmプロセスを使ったプロセッサーの開発でもつまずくなど、すっかり精彩を欠いている。製造技術では台湾TSMC(台湾積体電路製造)の、マイクロプロセッサーの性能でも米AMDに後れをとる状況が常態化しつつある。

 今回のテクノ大喜利では、Intelが「ファブレス半導体メーカー」になると仮定し、同社が独自プロセス技術による製造をしなくなることが半導体業界に与える影響について議論した。最初の回答者は、Grossbergの大山 聡氏である。同氏はIntelの現状を鑑み、米中覇権争いで戦略物資となる半導体の自国生産にこだわる米国政府が、本来米国半導体業界のエースとして先頭で戦うべき立場だったIntelに肩たたきをした可能性を示唆している。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる) 1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマン・ブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】仮にIntelがファブレスになったとして、同社のビジネス競争力が今よりも強化されると思われますか?
【回答】強化される可能性は低いが、パソコンおよびサーバー向けプロセッサーの中心的供給者の立場は守れると思う
【質問2】Intelがファブレスになることで、得をする半導体メーカーはどこだと思われますか?
【回答】TSMCにとって、大手顧客が現れることになる
【質問3】Intelがファブレス半導体メーカーになったとき、IT業界や電子業界、半導体業界にどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】影響は半導体業界内に限られると思われる