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日本の大学は、小学校、中学校、高等学校と段階的に学習内容が高度化していく流れの延長線上につくられ、それに研究機能が付加されたような教育内容になっている。一方、米国をはじめとする海外の大学は、もちろん日本の大学と同様に教育機関ではあるのだが、社会的な位置付けが根本的に違っているようにも見える。新たな知恵と知識を生み出す社会・産業を支える公共財としての大学が先にあり、その場を借りて、明日を担う人材をOJTしているようなところがある。だから自然と、新しいことをしたい企業が集まってくる。日本の大学と、研究の国際競争力が高い米国の大学は、そもそも異業種なのではないか。
日本の大学が模索する研究資金調達の新たな手法の行方と、それによる大学での研究の在り方の変化について議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、立命館アジア太平洋大学の中田行彦氏である。同氏は、スタンフォード大学の研究・開発を支える資金を集める仕組みなどを詳しく調査・分析した成果を基に、同大学が国際競争力のある研究を持続できる理由を解き明かしている。
(記事構成は、伊藤元昭=エンライト)
中田 行彦(なかた ゆきひこ)
⽴命館アジア太平洋⼤学 名誉教授
⽴命館アジア太平洋⼤学 名誉教授

【質問1】海外の大学に比べて、日本の大学で研究資金が不足しがちになる根本的な原因は何だと思われますか?
【回答】国立大学への運営費交付金を、前年度比1%ずつ減額したことが原因。前例・前年度比を重視する日本的な政策立案では国際競争には勝てない
【質問2】大学債発行や産学連携の大型化、大学発ベンチャーの育成などを推し進めることで、日本の大学における研究の国際競争力は高まると思われますか?
【回答】先達のスタンフォード大学は民主導。官主導が、民主導の呼び水になるかが鍵
【質問3】大学での研究資金調達を後押しするため、国はどのような支援をすべきだと思われますか?
【回答】民主導の研究資金の呼び水になるように、人を「選択と集中」した研究プロジェクトを支援すべきだ