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 「覆水盆に返らず」ということわざがあるが、これは米国の製造業復興の動きにも言えるかもしれない。

 これまで米国の半導体業界は、より付加価値の高いチップ設計分野に注力し、巨額の資金が必要な設計とさらに莫大な資金が必要な製造の両方を抱えることを避けながら発展してきた。米国の代表的な半導体メーカーがほとんどファブレスであることには、相応の経済合理性があった。ところが、現在、政府主導で進められている製造業復興の動機は、安全保障上の理由が中心であって、半導体メーカーから見れば合理性を欠くものだ。確かに、極めて先進的な防衛用の半導体ニーズが自国にあることは、米国の半導体メーカーにとってありがたいことだろう。しかし、いまさらその重要性を持ち出され、非合理的な自国での生産に踏み切ることなどできないと考えるのが本音ではないか。

 米国が進める製造業の復興の動きに、サプライチェーン上にいる日本企業がどのように対処していくべきか、そして世界の産業構造がどのように変わりつつあるのかを議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、一度手放した半導体製造の機能を、米国が再び取り戻すことがいかに困難なことなのか説いている。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし) 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経xTECHなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】米国による半導体の自国製造の強化の動きに対して、日本の製造装置・材料メーカーはどのように対処すべきだと思われますか?
【回答】米国の半導体メーカーの近くにサービス拠点を置いて開発・製造協力
【質問2】今後、米国による製造業復興の動きは、半導体以外のどのような分野に波及すると思われますか?
【回答】半導体のアプリである電子機器やその表示を担うFPD
【質問3】米国による製造業復興の動きは、世界の産業構造にいかなる影響を及ぼすと思われますか?
【回答】米中産業のデカップリングの促進、日本の製造業の空洞化