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 日本には、世界の中で高い競争力を誇る半導体関連の製造装置と材料のメーカーが数多くある。米中対立においては、ここ数年とてもよい顧客だった中国メーカーとの関係をいかに維持できるかが気になるところだった。これが、製造業の復興、特に半導体の製造の増強を米国が目指し始めたことで、米国もよいお客さんになる可能性が出てきた。これまでは、米Intel(インテル)など限られた半導体メーカーが米国で製造しているだけであり、将来の成長市場とはみなしていなかった。これからは、米中両国の間で、これまで以上にしたたかに振る舞っていく必要があるかもしれない。

 既に米中両国を両にらみしながら、上手に振る舞って半導体業界の中で大きな存在感を示している企業がある。台湾TSMCである。少なくともはた目には、同社は両国政府に対しても極めて有利な交渉ができているように見える。

 米国が進める製造業の復興の動きに、サプライチェーン上にいる日本企業がどのように対処していくべきか、そして世界の産業構造がどのように変わりつつあるのかを議論している今回のテクノ大喜利。5番目の回答者は立命館アジア太平洋大学の中田行彦氏である。同氏は、米中対立の中で両国政府の意向の間で立ち振る舞うTSMCから学ぶべきことについて論じた。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
中田 行彦(なかた ゆきひこ)
立命館アジア太平洋大学 名誉教授
中田 行彦(なかた ゆきひこ) 神戸大学大学院卒業後、シャープに入社。以降、33年間勤務。液晶の研究開発に約12年、太陽電池の研究開発に約18年、その間、3年間、米国のシャープアメリカ研究所など米国勤務。2004年から立命館アジア太平洋大学の教授として、技術経営を教育・研究。2009年10月から2010年3月まで、米国スタンフォード大学客員教授。2015年7月から2018年6月まで、日本MOT学会企画委員長。2017年から立命館アジア太平洋大学 名誉教授・客員教授。2020年から名古屋商科大学非常勤講師。京都在住。
【質問1】米国による半導体の自国製造の強化の動きに対して、日本の製造装置・材料メーカーはどのように対処すべきだと思われますか?
【回答】中国に工場を持ちながら米国にも工場を建設する台湾TSMCから学ぶべきだ。製造業であると同時にサービス業でなければならない
【質問2】今後、米国による製造業復興の動きは、半導体以外のどのような分野に波及すると思われますか?
【回答】電気自動車は技術覇権に不可欠であり、半導体から電気自動車へ波及する可能性がある。米Teslaを中国から米国に揺り戻す動きだ
【質問3】米国による製造業復興の動きは、世界の産業構造にいかなる影響を及ぼすと思われますか?
【回答】米国の補助金政策の転換により、米中覇権戦争は激化する。世界の製造業は米国か中国かの選択を迫られてくる。しなやかに顧客第一で対応すべき