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 日本の半導体業界が黄金期の中にあった1980年代前半、米Intel(インテル)は経営上の大きな分岐点を迎えていた。80年代初めまでDRAMのトップメーカーの一角を占めていた同社は、64キロビット品と256キロビット品の開発で台頭する日本企業に大きく出遅れてしまった。そこに運悪く大不況が重なった。当時、パソコンは黎明(れいめい)期にあり、CPUビジネスが成長しつつある状況ではあったが、DRAMほどの事業規模にはなっていなかった。

 DRAMビジネスでは積極投資が不可欠。だが、DRAMビジネスでの挽回を目指すのなら、CPUビジネスに資金が回らない可能性があった。そこでIntelが1985年に下した決断は、中核事業のDRAMから撤退して、成長余力があるマイクロプロセッサーに賭けるというものだった。競合に競り勝った日本企業は、無邪気に自らの技術力を誇った。日本企業にとってその当時のIntelは「技術競争に負ければ撤退を余儀なくされる」という反面教師そのものだった。しかし、その後の結果を振り返れば、当時の日本企業は技術トレンドの変化に敏感だったと言えたのか。その後、四半世紀にわたってトップ企業として君臨することになるIntelの姿は、まったく想像できていなかった。

 さまざまな視座から2021年の潮流を読む回答者の方々に、注目するトレンドについて聞いている今回のテクノ大喜利。今回の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、20年の米NVIDIA(エヌビディア)と米AMDの大躍進をたたえる回答をする一方で、凋落(ちょうらく)を指摘されているIntelに危機に直面しているからこそのイノベーションの創出に期待を掛けている。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし) 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経xTECHなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「2桁成長光ファイバー・半導体(毎日新聞出版eBOOK)」「有機EL・半導体バイブル(毎日新聞出版eBOOK)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】2020年に起きた電子産業の出来事の中で、最も驚きを感じた動きをお聞かせください。
【回答】 NVIDIAおよびAMDの大躍進と、それに飽き足らずにさらに躍進するための超大型買収。対照的なIntelの危機直面と一部事業の売却
【質問2】2021年に、注目しているビジネストレンドをお聞かせください。
【回答】ニューノーマルビジネスの鍵を握る「デジタル化(デジタルトランスフォーメーション:DX)」と「脱炭素化(グリーントランスフォーメーション:GX)」の促進、その中核エンジンはやはり半導体
【質問3】2021年に、注目している技術トレンドをお聞かせください。
【回答】(1)半導体技術としては、EUV(極端紫外線)リソグラフィーの本格的実用化とさらなる微細化の進展、(2)半導体のアプリとしては、クラウド側のデータセンターの電力効率向上とエッジ側のエッジAIの低消費電力化