コロナ禍によって、製造業の業務の進め方が一変した。商品企画や開発、製造、販売などあらゆる場面で、人が集まって協議しながらの価値創造や生産性・品質の向上ができなくなったからだ。特に、人と人の間での擦り合わせ、現場に出向いて五感で状況確認する現場主義が根付き、強みとしていた日本企業の多くが対応に苦慮したようだ。
また、米中対立によっても、製造業の業務の進め方に変革が求められた。米国政府は、安全保障上や外交政策上の問題を抱える中国企業をエンティティーリストに連ね、直接・間接問わずそこに挙げられた企業との取引を禁じるようになった。自社が仕入れた材料や部品、さらには出荷した製品がエンティティーリストに入っていないことを明確に確認できないとビジネスができなくなったのだ。これは、製造業各社にとって大きな負担を強いた。
さまざまな視座から2021年の潮流を読む回答者の方々に、注目するトレンドについて聞いているテクノ大喜利。今回の回答者は、日本の半導体メーカーの現役社長である京都セミコンダクターの高橋恒雄氏である。同氏は、2020年4月に同職に就いて以来、日本企業が誇る人的な強みに支えられた優れた生産ラインをIoT化し、さらなる生産性の向上を目指す取り組みをしてきた。くしくもそうした状況で対応が迫られたコロナ禍と米中対立が、典型的な日本の製造業企業である同社に与えた影響と、それに対するデジタルトランスフォーメーション(DX)の効果を経営者の視点から語った。
京都セミコンダクター 代表取締役 兼 CEO
