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 自動車の開発・生産を受託するODM(相手先ブランドによる設計・製造)企業が力をつけてきている。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)トレンドに沿ってクルマの構造や、それを開発・商品化するバリューチェーンの構造が大きく変革する中、こうしたODMやファウンドリー企業の活躍の場が広がる可能性がある。

 自動車ODMの代表的企業であるオーストリアのMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)は、2019年に市場投入したトヨタ自動車の「スープラ」やドイツのBMWの「Z4」などの先進車両、メルセデス・ベンツの「Gクラス」などの高級車を含む多くのクルマの受託開発・生産で、技術と実績を積み重ねている。同社は、ソニーが2020年のCESで披露して注目を集めた試作車「VISION-S」の開発・製作を請け負い、先進的なアイデアを盛り込んだクルマを具現化する力も示している。

 自動車の開発や生産の実績がないIT企業やベンチャー企業にとって、自動車業界は極めて参入障壁が高い業界だ。しかし、車両や安全性に関する知見を持ち、自動車業界での実績が十分なODMやファウンドリーが開発・生産に関与すれば、ぐんと参入しやすくなることだろう。今回のテクノ大喜利では、自動車ODMが力をつけることによる、近未来の自動車業界の姿の変貌について議論した。最初の回答者は、アーサー・ディ・リトル・ジャパンの岡田雅司氏である。同氏は、安全性の確保と生産能力の両面から、依然として既存の自動車メーカーの実力が高いことを指摘しつつ、乗用車ではなく商用車ではODMの専業企業が飛躍する可能性があることを指摘している。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
岡田 雅司(おかだ まさし)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン マネジャー
岡田 雅司(おかだ まさし) 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・ディ・リトルにて、自動車・製造業を中心に、事業・地域・研究開発戦略や将来構想・産業構造分析などのプロジェクトに数多く従事。近年は官公庁に対する自動車産業政策の立案支援や中国市場における事業戦略策定にも注力している。
【質問1】自動車ODMのビジネスは、今後成長すると思われますか?
【回答】 EVや自動運転車の発展に伴い、一定の加速。ただし、大きな分水嶺はOEMのODM化

 Magna Styerの他、台湾Hon Hai Precision Industry (鴻海精密工業)がオランダFCA(Fiat Chrysler Automobiles)や中国のEV(電気自動車)ベンチャーであるByton(バイトン)と提携して参入を企図するなど、直近でODM専業プレーヤーの動きが加速してきているのは事実。特に、EV化に伴い、開発・生産に求められる「擦り合わせ」の重要度が従来のガソリン車に比べて下がる中、今後も一定の成長を続ける可能性は高い。また、法規制の議論が併せて必要となるが、自動運転化の進展によりフランスNAVYA(ナビヤ)の自律走行バスのような限定エリアでの低速EVの普及が進むとなると、輪を掛けて加速し得る。

 ただし、米Apple(アップル)が各国自動車メーカーに打診している動きに関係するように、一番の成長ドライバーは既存の自動車メーカー自身がODMビジネスを受けていくかどうかにある。EVになったとしても、命に関わる製品を安定した品質で大量に生産するのにはかなりのノウハウが必要だ。米Tesla(テスラ)が一躍自動車業界での存在感を高めたのも、デザインやOTA(Over the Air)など顧客に提供する付加価値が高いだけでなく、生産技術が安定してきた点によるところが大きい。現状、自動車ODMビジネスを展開する専業プレーヤーは非常に限定的であり、大量生産のノウハウを確立している自動車メーカーの対応いかんによって大きく左右されると考えられる。