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 再生可能エネルギーは、発電する場所の自然環境の特性に合った方法を選んで導入するのが、効果的かつ効率的に活用するための原理原則である。砂漠のような日照りが続く広大な土地ならば太陽光発電は極めて効果的だが、日本のように雨が多く、しかもまとまった未開発の平地が少ない国土では、太陽光発電は難しい。

 世界中の国や地域が脱炭素化に向けて足並みをそろえつつある。そんな今だからこそ、日本の国土には、いかなる形で自然エネルギーが存在し、脱炭素化のスケジュールに沿って何が活用できるのかを冷静に洞察する必要があるのではないか。

 世界規模の脱炭素化の波に乗るため、日本の産業界が採るべき戦略・施策について議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、Grossbergの大山 聡氏である。同氏は、日本の国土特性に合っていることは分かっていながら利用が進んでいない地熱とバイオマスの活用を、今こそ推し進める必要があることを訴えている。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる) 1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】脱炭素化に向けて、日本政府が真っ先に巨額投資すべき分野はどこだと思われますか?
【回答】地熱・バイオマス発電を含めた、再生可能エネルギーによる発電の推進

 欧州委員会は再生可能エネルギーの普及や電気自動車(EV)への転換に向けたインフラ整備などに注力し、米国のバイデン新政権は2035年までに電力の脱炭素化を目指すことを明言している。こうした政策からも分かるように、脱炭素化の最大のポイントは「発電関連の政策」と考えて良いだろう。クルマの電動化が進めば、排気ガスの削減は進むが電力消費は増えるわけで、結局は「炭素を出さずに発電する」ことが最重要視されるのは必然である。となれば選択肢は再生可能エネルギーか原発か、ということになる。ただし、筆者は原発稼働には反対派なので、ここでは再生可能エネルギーに集中して持論を述べさせていただく。

 2011年3月に東日本大震災が発生した当時の日本では、原発の恐ろしさを思い知らされる一方で、被災地における電力供給の問題が浮き彫りになった。そして再生可能エネルギーへの注目度が一気に高まった、という印象がある。

 再生可能エネルギーには、太陽光、風力、波力・潮力、流水・潮汐(ちょうせき)、地熱、バイオマスなど多くの種類があり、当時は政策として太陽光発電の普及が推進されていた。資源エネルギー庁の「電力調査統計」などから環境エネルギー政策研究所(ISEP)が作成した資料によれば、太陽光発電は日本の電源構成の7.6%を占めている(図1)。しかし、この比率を10%とか15%に増やすことは現実的とは思えない。日本のこれまでの普及政策に対して賛否両論はあるものの、政府がかなり積極的に推進してきたことは事実であり、その結果としてこの比率にたどり着いた、と筆者は感じている。となると、再生可能エネルギー比率を増やすためには、風力、地熱、バイオマスといった他の手法にも注力する必要がある。ただし、それぞれに問題がある。

図1 日本における2019年度の電源構成
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図1 日本における2019年度の電源構成
出典:資源エネルギー庁「電力調査統計」などからISEPが作成

 まず風力発電だが、日本では台風が頻発するために適さない、などの理由で普及が進んでいないようだ。地熱発電は、世界有数の火山国である日本の地熱資源は豊富で、日本の地熱発電技術も世界トップレベルのはずだが、適地のほとんどが国立・国定公園内で、景観が損なわれるなどの理由で普及が進まないという。バイオマス発電は、人手不足もあって国内の森林資産を生かし切れず、燃料の輸入頼みに拍車がかかっている点が課題だ。

 筆者の独断としては、台風が理由となっている風力は別として、国内の資源を有効に活用しうる地熱、バイオマスについては、もっと積極的に推進方法を検討すべきだと考える。今のところ、その議論すら活性化していないようだが、日本という国土の特徴を考慮した上で、目指すべき再生可能エネルギーの政策が議論されるべきではないだろうか。