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 脱炭素化と同時進行しているメガトレンドの1つに、あらゆる産業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)がある。これまで、属人的な知見やスキルに頼っていた意思決定、紙や帳簿を使って進めていた業務、さらには対面で行っていた意思疎通などを、ICTを駆使することを前提にして見直す動きだ。DXを進展させるためには、データを蓄積、処理、伝送するインフラの整備・増強が欠かせない。特に、膨大なデータが集中するデータセンターは、これからDXの広がりに合わせて、どんどん巨大化していくことだろう。

 ここで大きな問題が出てくる。データセンターで消費する電力が増大し、脱炭素化を阻害する可能性があるという点だ。世界規模の脱炭素化の波に乗るため、日本の産業界が採るべき戦略・施策について議論している今回のテクノ大喜利。5番目の回答者は、元 某ハイテクメーカーの半導体産業OB氏である。同氏は、脱炭素時代には脱炭素型データセンターの構築が必須になることを指摘。その実現に向けて必要とされる半導体と、そのビジネスにおける日本企業の競争力について論じている。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB)
某社リサーチャー
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB) 半導体産業をはじめとする電子産業全般で豊富な知見を持つ某ハイテクメーカーのOB。某国公認会計士でもある。現在は某社でリサーチャーを務め、市場の動きをつぶさにウォッチしている。
【質問1】脱炭素化に向けて、日本政府が真っ先に巨額投資すべき分野はどこだと思われますか?
【回答】脱炭素型データセンター

 温暖化ガス削減効果が最も大きく、かつ、高い産業波及効果が見込めるのが、データセンターの領域である。

 脱炭素化の政策投資には、世界的な温暖化ガス排出抑制の流れに歩調を合わせ、持続可能社会の構築に向けて世界と手を携えるという側面と、日本の優れたノウハウ、技術、製品をさらに洗練させて、産業国際競争力の強化につなげるという2つの目的がある。このような観点から、投資は産業界への波及効果が大きい分野に重点的に配分すべきである。

 データセンターの消費電力は、30年には日本の総発電量の15%~20%に達する見込みである。世界全体で見ても同様の状況になる。さらにアグレッシブな経済産業省の予想では、デジタル関連の国内の消費電力量が、30年には現在の日本の総発電量の1.4倍に達するという。

 データセンターの消費電力低減は、最も緊急度が高い課題の1つであるとともに、大きな温暖化ガス削減効果、つまりは市場が見込める領域でもある。

 脱炭素型データセンターの構築に必要とされるのは、ストレージをHDDからフラッシュメモリーに置き換える、アクセラレーターでCPUの負荷を減らすといったデータセンターの消費電力低減が真っ先に思い浮かぶ。

 ニアラインストレージのフラッシュメモリー化やアクセラレーターのチップレット実装などは、半導体、半導体製造装置、電子材料に多大な恩恵をもたらすことになる。しかし、実は、残念ながら現段階では世界のデータセンターはあまりそこには熱心ではない。

 私が調査したところ、ほぼすべてのデータセンターが同じ方向を向いていた。何かというと再生可能エネルギーの積極導入である。データセンターの使用電力を100%再エネにしたという企業もあった。

 日本企業は残念ながら太陽電池でも、風力発電設備でも世界的な競争力はない。ただし、これも半導体業界には非常に大きな事業機会になる。風力発電にしろ、太陽光発電にしろ、パワーデバイスの巨大な需要が発生するからである。