全3026文字
PR

 コロナ禍によって応用市場の需要見込みが想定を外れたことで顕在化した半導体不足は、複数の半導体メーカーの工場で立て続けに発生した火災や、豪雪・水不足などが加わり、深刻度を増している。自社製品の生産で半導体が必要不可欠な機器メーカー各社は、その調達を急いで大混乱の状況だ。ただし、非常事態に端を発したサプライチェーンの混乱でよく起こることだが、ユーザー側が過度に反応したことで、実際には実需に見合った供給体制が整っているにもかかわらず、表面的には不足しているように見える場合もある。コロナ禍初期で、マスクやトイレットペーパー、食料品が小売店から消えたのと同じ現象だ。

 市場環境の急激な変化による半導体不足に備えるための方策を議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、元 某ハイテクメーカーの半導体産業OB氏である。同氏は、現在の半導体の供給能力を冷静に見れば、足元の半導体不足の状況は、実際には既に解消されているのではないかとみている。そして、過剰反応のゆがみから、近い将来、供給過剰状態に陥ることに懸念を表明している。加えて、今回のような半導体不足が起きる構造的問題を整理し、その解消に向けたアイデアも提案している。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB)
某社リサーチャー
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB) 半導体産業をはじめとする電子産業全般で豊富な知見を持つ某ハイテクメーカーのOB。某国公認会計士でもある。現在は某社でリサーチャーを務め、市場の動きをつぶさにウオッチしている。
【質問1】コロナ禍が明けた後、現在の半導体不足の状態は解消すると思われますか?
【回答】実は半導体不足は既に解消している

 目下、そうでなくても、特殊要因で半導体が不足気味だったところに、旭化成エレクトロニクス、ルネサス エレクトロニクス、台湾TSMCと立て続けに半導体関連の工場で火災が発生し、米国テキサス州のオースティンにある韓国Samsung Electronics(サムスン電子)などの工場では豪雪で4工場が一時期閉鎖、台湾では水不足の懸念があり、半導体の需要家は、一種の恐慌状態になっている。

 火災、天災の影響が一巡し、仮需が剥落し、現在の大型設備投資によって増加した製造能力が乗っかれば、かつて見た光景が、つまり、突然の半導体不況到来という状況が、再びよみがえることになろう。1998年も、2000年も、不況の直前まで、半導体製造装置メーカーは「1年分を超える受注残を抱えている」「多少、キャンセルが入っても、他の案件で製造ラインはすぐに埋まる」「このご時世に、2社購買などと言っている半導体メーカーには装置を持って行かなくて良いのではないか」と言っていたのだから。

 ただし、中期的には、半導体需要はまだまだ伸びる。設備産業である以上、設備サイクルによる景気の波は不可避であり、調整局面が来てもあまり悲観的に考える必要はない。