全2795文字
PR

 コロナ禍に端を発して起きた半導体不足は、自動車業界にとっては、CASE(Connected、Autonomous、Shared&Service、Electric)時代のサプライチェーンでどのような問題が起き得るのか事前に知っておく、一種のストレス試験になったのではないか。自動運転やコネクテッドなどデジタル技術を駆使することになるCASE時代のクルマには、おそらく最先端の製造ラインで作るチップが数多く搭載されることになるだろう。当然、それらのチップは、台湾TSMCなどファウンドリーに生産を委託する。すると、自然とスマートフォン向けやパソコン向け、サーバー向けのチップと、製造ラインを奪い合うことになるだろう。

 市場環境の急激な変化による半導体不足に備えるための方策を議論している今回のテクノ大喜利。7番目の回答者は、アーサー・ディ・リトル・ジャパンの岡田雅司氏である。同氏は、多様な産業につながるユーザーを抱える半導体業界の自動車産業とは異なる事情を、自動車メーカーが理解することの重要性を強調している。その延長上で、スマートフォン向けチップなどの製造委託を通じてファウンドリーとの間に太いパイプを持つことが、米Apple(アップル)が、いわゆる「アップルカー」を事業化する際にプラスに働く可能性にも言及している。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
岡田 雅司(おかだ まさし)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン マネジャー
岡田 雅司(おかだ まさし) 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・ディ・リトルにて、自動車・製造業を中心に、事業・地域・研究開発戦略や将来構想・産業構造分析などのプロジェクトに数多く従事。近年は官公庁に対する自動車産業政策の立案支援や中国市場における事業戦略策定にも注力している。
【質問1】コロナ禍が明けた後、現在の半導体不足の状態は解消すると思われますか?
【回答】コロナ禍とは関係なく、構造的な課題が解決しなければ解消しない

 現在の半導体不足は、新型コロナウィルス拡大に伴うロックダウン・景気停滞に伴う自動車販売・生産減少から、中国などでの急速な需要回復に伴う形で、自動車業界に端を発して顕在化したのは確かである。

 2020年初以降、コロナ禍で自動車業界が生産調整を進める一方で、第5世代移動通信システム(5G)関連などの通信分野やエネルギー関連分野への投資は堅調に推移している。加えて、先進国中心にテレワークの推進や巣ごもり需要が拡大する中で、パソコン(PC)やスマートフォン、ゲームなどの民生需要が拡大した。半導体の製造を請け負うファウンドリー企業の生産計画は、自動車業界以外へのシフトが進んでいた。ここでさらに、2020年夏以降、中国を皮切りに世界各地の市場で自動車需要が急速に回復。その需要に対応するための車載用半導体の供給が追い付かない状況となった。これが、半導体不足が起こった経緯である。そして、日本における工場火災や北米寒波もそれに拍車をかけた。

 ただし、後述する通り、半導体業界における構造的な部分に課題があり、コロナ禍はあくまでもその課題を顕在化するトリガーになったにすぎない。コロナ禍が明ける、明けないは半導体不足には直接的に影響はしないと考えている。