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【質問3】IDM2.0を契機にして、技術開発のトレンドにいかなる変化が起きる可能性があると思われますか?
【回答】More than Mooreとポストノイマンが加速化、トレンドが多様化

 IDM2.0でIFSが対象とする応用分野を、チップ技術の違いからプロセス技術(微細化のMore Mooreと3D化やパッケージなどのMore Than Mooreがある)、アーキテクチャー、そして成熟分野の3つの視点に分類したものと、TAT(turn around time)の違いから短TAT、中TAT、長TATの3つに分類したものに分け、3×3のマトリックスで考察した。

 右側の成熟プロセスは、ロジックもアナログパワー系もあるが、セットやシステム側との垂直統合志向が強く、各種品質も含めたカスタマイズや小ロット対応、長期メンテナンスが鍵になる。ここは、ファウンドリーでは付加価値を出しにくい領域である。その一方で、ロングテールが多いが、全体的には車載向けも産機向けも成長分野ではある。PC市場はIntelが、スマートフォン市場はAppleが主導したが、自動車や産機はトヨタ自動車やファナックなどがけん引していくことになるだろう。そこでは、量産の方法やTATも変わってくる。それぞれに合った生産技術があり、自動車のケーレツ対応も重要だ。技術開発だけでなく、業界全体で、慣習も含めて見直し、設計や汎用化を模索すべきところだろう。価格転嫁次第だが、そうした対応は、IntelもTSMCも難しく、実は日本が日の丸ファウンドリーを立ち上げるなら狙える領域だ。

図6 ファウンドリー・サービスの応用分野をチップ技術とTAT、2つの視点から分類
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図6 ファウンドリー・サービスの応用分野をチップ技術とTAT、2つの視点から分類
出典:筆者が作成

 プロセスでは、半導体業界が微細加工中心のMore Mooreの方向性だけを進むのであれば、先端ロジックを中心に、TSMCの優位は変わらない。しかし、同時に微細化限界がやがて到来する時に、製造技術の進化も終わる。それゆえ、既に萌芽しつつあるMore Than Mooreの方向にかじを切らなければならない。それは一つの軸だけでなく、3D化、後工程パッケージ、など多くの方向がある。

 今回、TSMCがつくばプロジェクトに関心を持ったのも、TSMCが後工程パッケージをはじめとするMore than Mooreを重視しているからである。そこでは、日本企業に強みがある新材料や後工程装置メーカーが重要となる。次第に前工程と後工程が融合していく点も見逃せない。

 もう一つは、ノイマン型アーキテクチャーから非ノイマン型アーキテクチャーへの転換である。ノイマン型アーキテクチャーでは、ハードとソフトに分け、ハードはメモリーとプロセッサーに分けるなどして個別最適を追求してきた。こうした枠組みの中で、プロセッサー中心に技術開発が進んだ。一方、非ノイマン型的な進化は、一言では表現できないが、全体最適であり、省エネルギー化重視である。ここではプロセッサーからメモリー、センサーが中心となり、More Than Moore的な積層や光電接続なども、その進化を支える基盤技術となる。

 ここで注目されるのは、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)による独自チップの開発、いわば自前ファブレスの動きである。これらの企業は、既に独自のプロセッサーの開発力を保有している。今後は後工程の技術もどんどん取り込んでいき、前工程と後工程の融合を進めて、独自にセミカスタムチップのASIC開発を行う技術力を保有していくことだろう。いわば、かつての独自半導体の搭載が当たり前だったメインフレームビジネスのような体制だ。そこで、IntelがマイクロプロセッサーをASSPとして、世界標準を取れるかが鍵となる。自動車メーカーでも、同様の動きがある。自動運転車用やEV用に、各社、個々にASICを内部開発する可能性がある。この動きを押しとどめ、標準的なASSPの活用が中心となるように誘導できるかが、今後のIntelのビジネスが成長する上での鍵となるだろう。

図7 コンピューターのアーキテクチャーの主流が非ノイマン型へと移行すれば、IDMに優位性が出てくる
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図7 コンピューターのアーキテクチャーの主流が非ノイマン型へと移行すれば、IDMに優位性が出てくる
出典:筆者が作成

 ここまでの考察を要約すれば、技術開発の方向性は多様化していく。More Mooreとノイマン型的進化では米国や台湾が中心で先導してきたが、これからはMore Than Mooreと非ノイマン型的進化、変種変量小ロットなどがトレンドになる。ある程度の量が見込めればASSPであり、そうでなければASICとなる。その中に、FPGAのようなアプローチもある。こうした環境下で、IDMとファウンドリーのせめぎ合いも出てくる。

 そこでは、多種多様な技術を持つ日本勢が車載や産機など、そこそこの規模の市場でASSPを開発したり、ある領域に特化したファウンドリー市場を見いだせる可能性がある。逆転の機会は増えてきたのではないか。