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 米Intel(インテル)が打ち出した新戦略「IDM2.0」の中には、サードパーティーのファウンドリー活用範囲の拡大や、ファウンドリービジネスの実践といった施策が含まれている。この施策の意味を深く考えてみれば、台湾TSMCとの製造技術の共通化が起きる可能性が浮上してくる。半導体チップの設計は、利用する製造技術に最適化して行う必要があり、一度チップ設計をしてしまうと、簡単に製造の委託先を切り替えることなどできないからだ。IDM2.0の今後の行方とその影響を考える上で、Intelが自社の製造技術をいかなる指針でTSMCのプロセスと共通化するのかは、極めて重要な論点になる。

 IDM2.0が、半導体業界の今後に与える影響について議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、元 某ハイテクメーカーの半導体産業OB氏である。同氏は、ファウンドリーユーザーである多くのファブレス半導体メーカーやシステムメーカーから、Intelという企業がどのように見えているかを論じている。さらに、製造技術の共通化が求められ、IntelがTSMC互換の技術を導入する可能性すらあることを指摘している。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB)
某社リサーチャー
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB) 半導体産業をはじめとする電子産業全般で豊富な知見を持つ某ハイテクメーカーのOB。某国公認会計士でもある。現在は某社でリサーチャーを務め、市場の動きをつぶさにウォッチしている。
【質問1】IDM2.0によって、半導体製造技術の主導権がTSMCに集中する現在の状況が解消すると思われますか?
【回答】しない

 半導体業界と電子機器業界は、先端半導体の製造をTSMC1社に依存する状況を誰も望んでいない。有力な競合企業が、最低でもあと1社出てくることを望んでいる。ただし、1社独占が避けられないのならば、Intelや韓国Samsung Electronics(サムスン電子)に比べれば、TSMCの方がよいと思っている。

 産業のサプライチェーンのチョークポイントを押さえている企業は、その立場を利用して、過剰な利益を得たり、顧客の重要情報を自社の事業に活用したりするという誘惑に駆られることもあろう。ところが、その誘惑に負けてしまった企業、少なくとも経営者は、二度と業界から信用してもらえなくなる。

 Samsungは米Apple(アップル)のアプリケーションプロセッサーのファウンドリーとなり、その後、スマホ市場でAppleを上回るシェアを獲得。AppleはSamsungを「Copy Cat」と非難した。一方のIntelは競合企業に対して、執拗(しつよう)とも言える徹底的な特許訴訟を行い、競合企業の士気を阻喪(そそう)させ、マイクロプロセッサー市場からの撤退に追い込んで巨額の利益を得た。どちらも、業界からは、アンフェアと評価されている。

 これに対しTSMCは、表見的には技術力とコスト競争力だけで競合と勝負し、今の地位を築いた。顧客が安心して付き合える企業、他の半導体メーカーがパートナーとして協業できる企業がTSMCなのである。

 Intelは、材料メーカーや製造装置メーカーがベンダーとして付き合う分には、時に気前の良い王様になる。そして、Intelのことが大好きな企業も少なくないのだが、広く信頼されているわけではない。