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 産業や職種などを分類する際の切り口の1つに、「G型」と「L型」という区分がある。G型は、グローバルな市場を対象にしたビジネスや仕事、L型は逆に地域密着型を指す。電子産業や自動車産業に籍を置くエンジニアにとっては、常にグローバル市場を意識した技術や製品を開発するのが当たり前と考える人も多いかもしれない。しかし実際には、先進国ほどL型の分野・職種で働く人が多くなっているという調査結果がある。G型とL型は、産業や社会が発展するうえで相互依存の関係にあるようだ。

 電子産業で技術畑のシニア人材を活用する意義と採るべき方法について議論している今回のテクノ大喜利。5番目の回答者は、Grossbergの大山 聡氏である。同氏は、L型産業でイノベーションが求められている例が多く、その創出に向けてG型産業である電子産業の知見が必須になることを指摘。そこに電子系のシニア人材の活躍の場が多く生まれているとしている。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト)
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる) 1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】いま、電子産業出身のシニア人材の活躍に対する期待が、特に高まっている産業・業種はどこだと思われますか?
【回答】農業や地方自治体など、IoT活用で伸びしろが期待できる産業

 実際に農業や地方自治体において、電子産業出身のシニア人材が活用されているかと言えば、事例としてはまだ多くないかも知れない。しかし、筆者としては是非とも今後活用事例が増えてほしい、と強く願っている。

 半導体をはじめとする電子産業の多くは、世界市場(グローバル市場)を対象とするG型産業である。他社よりも安く大量に製品を作らなければ競争に負けてしまうタイプの産業だ。どの地域で生産したのか、どの地域向けを対象とした製品なのか、といったことは重要視されない。このため、特定の地域に根付く産業とは言えない。ともすれば特定の地域にこだわりを感じたり、自社の個性を必要以上に主張しようとしたりする多くの日系企業にとって、G型産業での成功事例は少数派というのが現実だろう。

 ところが、本来G型である電子産業のノウハウが、特定の地域(ローカル市場)を対象とするL型産業に活用される大きなチャンスがある。IoTの導入がまさにそれだ。農業の生産性向上や農産物の品質向上、地方自治体のサービスの活性化などが実現できれば、日本中の地域経済の活性化にも役立つ。IoTは、電子産業との親和性が低い産業に活用した方が大きな伸びしろを期待できる、という特徴がある。このため、さまざまなアイデアを多方面から募る、あるいは他の地域での成功例を模倣するなど、低い親和性を融合させるための姿勢が必要である。

 電子産業出身のシニア人材、と一言で言っても、半導体、電子機器など多様な分野があるし、営業、設計、製造、品管など職種も多岐に及ぶ。一握りの経験者が農業や地方自治体に赴いたとしても、いきなりIoTシステムを構築することは簡単ではない。それまで電子産業との親和性の低かった産業と産業をつなぐ、あるいは自分の経験や人脈を駆使して必要なノウハウを揃えるなど、個人の努力が求められよう。またこれらのシニア人材を活用したい側の環境サポートも欠かせない。1つの成功事例を共有しあうことで、他の地域で模倣しやすくする、などの仕組みづくりが普及のカギを握るのではないだろうか。