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 企業が成長していく際の道筋は多様だ。他社より劣る部分が自社にあること、他社が持っているモノを持っていないこと。そんな状況を自覚した場合、改善策を考えるのは当たり前のように感じる。ただし、劣った部分や持たざるモノが致命的でなければ、「他社は他社、我が社は我が社」と割り切って、自社の長所を伸ばすことにまい進した方が得策な場合も多いだろう。だが、こうした割り切り、選択と集中によるポジショニングには高度な戦略眼が必要である。

 ルネサスエレクトロニクスにも、こうした事業環境の大きな変化の波が押し寄せる。半導体業界を取り巻くビジネス環境の変化を念頭に置いて、現時点でのルネサスの取り組みと明日への進路について評価・議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、元 某ハイテクメーカーの半導体産業OB氏である。同氏は、世界市場の中でルネサスの存在感が小さくなっていった原因はマーケティング力の欠如にあると断じている。そして、M&Aを繰り返したことによって技術や製品の扱い範囲が広がったが、何より大切なマーケティング力はいまだ世界レベルにはないと論じている。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト)
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB)
某社リサーチャー
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB) 半導体産業をはじめとする電子産業全般で豊富な知見を持つ某ハイテクメーカーのOB。某国公認会計士でもある。現在は某社でリサーチャーを務め、市場の動きをつぶさにウォッチしている。
【質問1】これまでにルネサスが実施したM&Aによって、世界の競合に勝つ事業体制が確立できたと思われますか?
【回答】できていない

 ルネサスのM&Aは、会社の公式発表によると、想定以上にうまく行っており、米IDTにしろ、米Intersil(インターシル)にしろ、当初の計画を上回るシナジー効果が出ているとのことだ。外部に向けてこのような発表ができるようになっただけでも、昔に比べたら相当の進化と言える。

 ところが、M&Aによって、競合に勝つ事業体制ができたかというと、それは全く出来ていない。そもそも、M&Aによる製品ラインアップの拡大が競争力に結び付くのであれば、なぜ、あれほど豊富な製品ラインアップを誇っていたルネサスが、ここまでちょう落したのか説明がつかないではないか。

 かつてのルネサスが競合に負けたのは製品ラインアップの不足ではないし、製品ラインアップを増やしたところで、競合に勝てる体制が整うはずがない。ルネサスが負けたのは、マーケティング力の欠如、利益マインドの欠如、そして営業力の欠如が原因であった。

 その点が改善されているかどうか、そして、海外の競合他社と戦っていける体制が整ったかどうかが見極めるべきポイントであろう。私の評価だが、昔に比べれば利益マインドなどには変化がみられているものの、マーケティング力、営業力などは、まだ世界第一線で戦えるレベルではないと考える。