日本のパワー半導体は、世界市場の中で高い競争力を持っている。漠然と、こう考える人は多いことだろう。実際、英Omdia(オムディア)の調べでは、2020年のパワー半導体シェアのトップ10には、3位に三菱電機、5位に富士電機、6位に東芝、7位がルネサス エレクトロニクスと4社も名を連ねている。しかも、足元にはパワー半導体の有力な応用先となる強い重電産業や自動車産業もある。日本のパワー半導体メーカーは、重電企業や車載電装品メーカーの部品内製業として営まれている場合が多い。こうした状況を見れば、デバイスと応用の間で技術開発と生産の両面でよいシナジーが生まれているように感じる。
では、その強みは、今後も維持できるのだろうか。そうとも言い切れないかもしれない。少なくとも生産面では、海外のパワー半導体メーカー各社は、生産ラインの300mmウエハー化を急ぎ、既に量産を開始しているところもある。カーボンニュートラル実現に向けた動きの加速や自動車の電動化によるパワー半導体の需要増を見込んだ動きだ。対する日本企業の動きは、東芝と三菱電機が300mmラインの投資計画を明らかにしたものの、総じて鈍い。
こうした状況にはデジャブを覚える。1990年代後半、総合電機メーカーの部品内製を目的として立ち上げられた日本の半導体ビジネスは、巨額の設備投資が本業の間尺に合わず、果敢な投資ができずに衰退した。それは、くしくも世界中で製造ラインの300mm対応が進んだ時期のことだった。今回のテクノ大喜利では、300mm時代に突入したパワー半導体ビジネスでの日本企業の現状と行方、および重電事業での競争力維持も念頭に置いた日本企業の勝ち筋を議論した。
【質問2】日本企業のパワー半導体ビジネスでの国際競争力の維持・強化に向けて、今、どのような戦略・施策が必要だと思われますか?
【質問3】日本の重電系のビジネスの国際競争力を維持・強化するために、半導体業界で貢献できる支援は何だと思われますか?
3つの質問に対するそれぞれの識者による回答要旨は、以下の表の通りだ。