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 2021年は、あらゆる産業の企業が、価値観とビジネスの手法に大きな変化が求められた1年だった。2020年に顕在化した新型コロナウイルス感染症や米中対立などの影響がさらに深刻化・常態化し、半導体不足やサプライチェーンを分断するデカップリングなど、新たな問題が顕在化してきた。加えて、カーボンニュートラル達成に向けて、世界中の国や地域が具体的な政策を次々と打ち出し、主に社会貢献の観点から行われてきた各企業の脱炭素の取り組みが、次世代ビジネスの競争力醸成と価値創出を目指したものへと変わってきている。

 コロナ禍以降の2年間にビジネス環境は一変し、市場が企業に求める価値や技術、商品は、1年前とは確実に変わってきている。2022年には、時代と社会の要請に応える技術やビジネスを創出すべく、これまでとは異質の新たな潮流が技術開発・ビジネスに生まれてくるのではないか。今回のテクノ大喜利は、2022年に注目したい潮流・技術・企業の動きを、それぞれの分野・視座から産業界に関わっている有識者に挙げてもらった。最初の回答者は、アーサー・ディ・リトル・ジャパンの三ツ谷翔太氏である。同氏は、自社製品の消費者の視点から満足度の高い商品を開発するのではなく、コロナ禍以降には、個々の生活者を取り巻く環境の中で新たな価値を提供していくことが重要になっていることを指摘している。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト)
三ツ谷 翔太(みつや しょうた)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン パートナー
三ツ谷 翔太(みつや しょうた) 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・ディ・リトルにて、製造業やインフラ産業に対するイノベーション戦略の立案・実行支援、ならびに官公庁に対する産業政策の立案支援等に従事。昨今はカーボンニュートラルなど、複数業界を巻き込んだ新たな社会システムの創出に注力。主な著書に、2040年に向けた日本の社会・産業・企業の変革方向性を提唱した『令和トランスフォーメーション -コミュニティー型社会への転換が始まる-』『フラグメント化する世界 ーGAFAの先へー』など(いずれも日経BP)。
【質問1】2022年、注目したいビジネスや技術開発の潮流を挙げてください。
【回答】人間中心という考え方

 2021年は、新型コロナウイルス感染症の余波や米中対立の拡大など、一歩先が見えない年であった。特に2020年に始まったコロナ禍は社会に対してそのあり方や価値観を問い直すものであり、働き方や住まい方などを改めて再考した方々も多いのではないか。また、世界的に機運が高まっている脱炭素化やSDGs(持続可能な開発目標)に代表されるように、企業としてのあり方や存在意義も重要な経営アジェンダの一つとして認識される場面が増えてきた。

 このように不確実性が高い時代、かつ、これまでの常識が揺さぶられる時代においては、「何のために」と、ビジネスや商品の存在意義を改めて問い直すことが重要になる。2022年も引き続き、「何のために」が問われる局面が多いだろう。その時に持つべき視座の一つが「人間中心」という考え方だ。

 これまでは、自社のプロダクトやサービスの提供先にユーザーを位置づける、いわば「バリューチェーンの終点としての消費者」として人を捉えることが一般的だった(図1)。しかし、人間中心の時代においては、その言葉のとおり、ユーザーを中心として様々なプロダクトサービスを位置づけるという視点の転換が必要だ。「バリューチェーンの終点としての消費者」という捉え方はあくまでも提供者目線でのサービス定義だが、ユーザーの立場からしてみれば、様々な企業が提供するサービスが互いにつながって、個々のユーザーの生活を支えている。つまり、これからの人間中心の時代に向けて「ネットワーク中心の生活者」という捉え方をしていく必要があるだろう。

図1 人中心の捉え方
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図1 人中心の捉え方
出典:アーサー・ディ・リトル・ジャパン

 既にトヨタ自動車やソニーなど、名だたる企業が「人間中心」のような考え方を表明している。先が見えない時代だからこそ、人間中心の捉え方から、自社のビジネス領域や技術開発方向性を捉え直していくことがますます重要になるだろう。