2021年の日本の半導体産業にとっての最大の話題は、国内でのチップ製造を再興する機運が、具体的な動きを伴って盛り上がってきたことだろう。ただし、足元を見れば、最先端の露光装置の分野ではいつの間にか日本企業の存在感が喪失。今もなお世界をリードする立場にいるとはいわれている製造装置や材料に関しても、海外メーカーにジリジリとシェアを削り取られている。かつての勢いを取り戻すためには、チップ製造の再興と共に、装置や材料の強化に向けた会心の一撃が欲しいところだ。
2022年の電子業界、IT業界で注目したい潮流・技術・企業を、それぞれの分野や視座から産業界に関わっている有識者に挙げてもらうテクノ大喜利。今回の回答者は、半導体の製造装置・材料の動向をウオッチしている元 某ハイテクメーカーの半導体産業OB氏である。同氏は、半導体の製造装置の中で最も価値が高く、しかも1社が独占的供給体制を築いている極端紫外線(EUV)露光装置を国産化できるという、驚きの可能性を指摘している。
某社リサーチャー

EUV露光装置は、オランダASMLの独占市場となっている。日本は完全に勝負に負けてしまった、取り返しのつかないことになってしまった、というのが世間の一般認識だろう。
ところが、私は、大逆転の目が残っているのではないかと思っている。もっとも、具体的な動きや計画は、まだないのだが……。
現行世代のEUV露光装置と次のHigh-NA機での逆転は無理であり、やるだけ時間と金の無駄。そこは狙わない。マスク、ブランクス、レジスト、マスク検査装置などの周辺インフラは日本企業の得意領域である。光源もギガフォトンなど戦える技術はある。
また、露光装置の構成要素のうち、ステージは、5年計画で逆転に向けて、ニコンとCKDが準備することができるだろう。ニコン-CKD連合の実力はかなりのもので、450mmウエハー用のステージ開発では、ASMLに対して圧倒的に優位にあった。450mmウエハーが実現していたら、逆転も可能だったろう。一方、ミラーに関しては、キヤノンとニコンが5年計画で取り組めば追いつくことが可能ではないか。企業が取り組むには負担が大きすぎるので、ここにぜひ、国の援助を入れてほしいところである。
2022年、誰かプロジェクトを立ち上げてくれないだろうか。