全3689文字
PR

 新型コロナウイルス感染症(コロナ禍)で混乱した直近2年の間に、世界情勢は大きく変わった。その方向を一言で言うと、「内向化」と「仮想化」になるのではないか。

 私たちは、国を越える際の移動制限だけでなく、自国内での行動すらも制限されて自粛生活を送ってきた。こうした中で人々が得る情報は、直接触れ合って自身の目で見て感じるものから、ネットなどから流れてくる間接的かつ一方的なものが大半になってしまう。こうした情報が支配的な状況での思考が「内向き」になるのは必然かもしれない。世界的な「内向き」傾向の典型が米中対立である。また、生身の人間が直接触れ会えない中で、ネットワーク技術の進歩を背景にした仮想の交流の場が発達していくのも当然の流れである。今後の大きなトレンドになりそうな「メタバース」は、こうした現況に後押しされて加速しそうだ。

 2022年の電子業界、IT業界で注目したい潮流・技術・企業を、それぞれの分野や視座から産業界に関わっている有識者に挙げてもらうテクノ大喜利。今回の回答者は、中国の電子産業の動きと日本企業との関わりをウオッチしているテック・アンド・ビズの北原洋明氏である。同氏は、電子産業の分野、特に製造で重要な役割を果たす中国の状況を見ながら、「内向化」と「仮想化」によって変わる中国企業の今後を整理した。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト)

北原 洋明(きたはら ひろあき)
テック・アンド・ビズ 代表
北原 洋明(きたはら ひろあき) 半導体製造装置、ディスプレーパネル製造の経験を経て2007年にテック・アンド・ビズを立ち上げ、電子デバイス分野での情報サポートを行っている。製造の主力となっている中国での情報をベースとし、太陽電池、ディスプレーなどの分野で活動してきたが、最近はLEDや半導体その他の電子デバイスにも分野を広げている。中国のディスプレー協会の顧問などの活動も通して日系企業の現地ビジネスのサポートも手がけている。
【質問1】2022年、注目したいビジネスや技術開発の潮流を挙げてください。
【回答】エネルギー問題、特に脱炭素と再生可能エネルギーに関連した地政学的動向

 2022年に注目したいのは、エネルギー問題への対応の行方である。特に、対応のキーワードとなっている脱炭素と再生可能エネルギーへの対応に向けた取り組みの動きを注視したい。

 エネルギー問題は、人々の生活と国の産業発展には欠かせない最重要の課題である。各国の政治の根底にある課題であり、地政学の重要なテーマでもある。世界の製造工場といわれている中国でも、エネルギーの確保が政治の重要な課題となっている。脱炭素は地球温暖化防止のための重要な指標であり、その実現手法として、クリーンな再生可能エネルギーに期待がかかる。その一方で、再生可能エネルギーは、国家の内向化を加速する要因にもなる。

 化石燃料は、地球上の特定地域から産出し、必要とする消費地域へ輸送して利用する。このため、世界規模での輸送網が重要な役割を担ってきた。2000年代中ごろから急速に拡大した太陽光発電や風力発電などは、消費地域近隣での発電が可能である。ローカルな供給体制を作り上げれば、地球規模での輸送網は不要になり、これが内向化を後押ししていく。脱炭素を進めることは重要であるが、その裏で世界の政治体制や産業構造がますます内向化していくという現実も見ていかなければならない。

 質問にあるビジネスや技術開発といった視点では、脱炭素や再生可能エネルギーを進めていく中で多くのビジネスチャンスがある。再生可能エネルギーによる発電のための設備やデバイスといったハードもあるが、生み出されるさまざまなエネルギーを有効に活用するためのネットワークシステムが重要になっていくだろう。