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リモートでの仕事や学校の授業、そして飲み会まで・・・。コロナ禍の中では、世界中の多くの人たちが、ICT(情報通信技術)をフル活用して暮らしや仕事、社会活動を維持した。たとえ、これまでICTをあまり活用していなかったとしても、利用を半ば強制させられることになった。そして、これまで以上に多くの人がICT活用のメリットを知り、同時に現時点の技術では実現できないことも実感した。そんなより多くの人のICTリテラシーが高まったタイミングで、社会に新たな価値をもたらすコンセプトとして打ち出したのがメタバースである。

 これまでにも、ICT業界は、マルチメディアやユビキタスなど情報処理技術の新しい利用形態を提案するコンセプトを打ち出してきた。メタバースの取り組みは、これらにくらべて、潜在市場の十分地ならしが済んだ状態で始まる点が異なる。このため、当初から多くの企業が参入する可能性が高く、しかも競争が激しそうだ。

 2022年の電子業界、IT業界で注目したい潮流・技術・企業を、それぞれの分野・視座から産業界に関わっている有識者に挙げてもらうテクノ大喜利。今回の回答者は、証券アナリストの見地から電子・IT産業の企業動向を追っている東海東京調査センターの石野雅彦氏である。同氏はメタバースに取り組む企業の中から、2022年の注目企業を具体的に挙げた。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト)
石野 雅彦(いしの まさひこ)
東海東京調査センター シニアアナリスト
石野 雅彦(いしの まさひこ) 山一証券経済研究所、日本興業銀行、モルガン・スタンレーMUFG証券を経て、東海東京調査センターのシニアアナリストとして半導体、ディスプレー、通信などテクノロジー企業および産業を対象にした調査・分析に従事している。
【質問1】2022年、注目したいビジネスや技術開発の潮流を挙げてください。
【回答】 Z世代のメタバース需要が産業構造を変革させる

 2021年は、世界的な半導体不足が深刻な社会課題になった年であった。パンデミック対策の金融緩和で資本市場が巨大化し、世界の時価総額は120兆米ドル(1京3500兆円)とコロナ禍前と比較して米国を中心に30兆米ドル(約3400兆円)も増大した。

 コロナ禍の影響によって人々の海外渡航・移動が制約される中、資産効果により個人消費の潜在的な購買力が上昇した。高級な乗用車が挽回生産を待つほど、潜在需要が創出され、ゼロカーボンを目指す世界的な潮流が電気自動車(EV)の需要を急増させた。

 世界的なパンデミックがネット社会を数年先に進化させ、テレワーク、ビデオ会議など生活様式を変貌させた。そして、ネット需要の急増と生産効率を究極に高めたJIT(ジャストインタイム)の社会システムが複数カ月で生産する半導体の不足を深刻化させたといえる。

 2022年は、飛躍したネット社会がZ世代のメタバース需要で、さらなる進化を遂げることだろう。そして、ハイパースケーラー(グローバル規模の巨大事業者)は新需要に対応するHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)の半導体開発を活発化させると思われる。

 Z世代とは1990年後半から2010年代前半に生まれた世代を指すが、生まれながらにハイスペックなインターネット環境が存在し、ソーシャルメディア・ネティブであり、スマホ世代とも呼ばれる。Z世代の新しい価値観や生活様式が、メタバース需要を離陸させ、5G(第5世代移動通信システム)スマホをプラットフォームとして産業構造を変革させると予想する。