トヨタ自動車は、2021年12月14日にバッテリー電気自動車(BEV)戦略に関する説明会を開催。BEVへの4兆円規模の投資を発表するとともに、世界販売台数を2030年に350万台とする目標を掲げ、同年までにBEV30車種を展開するとした。海外メーカーに比べて、選択と集中ができていないのではとする意見もいまだあるものの、BEVへの対応が「遅い」「後ろ向き」「存在感がない」と揶揄(やゆ)する意見が多かった従来の世論に見直しを迫るインパクトのある発表だった。ただし重要なのは、本当に実行できるかだ。
2022年の電子業界、IT業界で注目したい潮流・技術・企業を、それぞれの分野・視座から産業界に関わっている有識者に挙げてもらうテクノ大喜利。今回の回答者は、自動車産業の領域でのトップアナリストであるナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏だ。同氏は、日本企業のBEVシフトへの対応に注目、トヨタ以外にも目配りし、場合によっては生き残りを賭けて驚きの企業連合が誕生する可能性も示唆している。
ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト

「グレートリセット」とは、2021年8月に世界経済フォーラムが開催したダボス会議のテーマであった。同会議では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた社会問題に真剣に取り組むための、新しい社会システムの構築が議論の対象となった。自動車産業も例に漏れず、2021年は不可逆的な電動化に向けて、自らの存在理由を示すために電気自動車(BEV)普及計画へのグレートリセットを示したエポックメーキングな1年となった。
2022年はその計画を実施に移す大きな一歩を踏み出す年だ。私の注目点は、出遅れと言われたトヨタ自動車の新型BEV「bZ4X」の価格競争力、販売手法、顧客体験(CX)設計などを含め、各量販ブランドのBEV製品の競争力の実力を見定めることだ。同時に、全固体電池までの間をつなぐ、次世代リチウムイオン2次電池の技術的な進化も表面化することだろう。それなしに、2021年に掲げた意欲的な計画などは絵に描いた餅である。誰が次の競争の主導権を握るのか、大いに注目したい。