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【質問3】自動車ビジネス参入後のソニーに期待したいビジネスイノベーションは何か?
【回答】フルオープンアーキテクチャーでのEV量産に期待

 今回のテクノ大喜利のテーマに含まれる、「世界線」とは何か。もともとは「相対性理論」から生まれた言葉で、簡単に説明すると「4次元時空の中で、ある粒子が動く経路」を言う。これからオタク用語として派生して、過去から未来への「経路」、また別の結果に行きつく「経路」の可能性も存在する。簡単には、幾つかの可能性ある「経路」と解釈しておく。

 そして、ソニーEVの「世界線」を考えてみる。

 2021年2月26日のテクノ大喜利で、異業種企業のEVへの参入とビジネスモデルをまとめた1)。これを、最近の動きを加味して表1に整理し直しておく。

表1 異業種企業の自動車への参入とビジネスモデル
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表1 異業種企業の自動車への参入とビジネスモデル
出典:著者作成

 Appleは、14年ごろから自動運転車への参入を模索し始めたようだ。19年11月までに地球の直径に相当する約1万2000kmを走行して、自動運転のためのデータを集めた。21年1月からは、韓国のHyundai Motor(現代自動車)をはじめ、日本のメーカーにも生産を打診したという。Appleは、iPhoneと同じように、EVも自社で研究開発し、Appleブランドを用いて、Apple主導で生産を水平分業するモデルである。

 一方、台湾のHon Hai Precision Industry(鴻海精密工業)は、EVプラットフォーム(EVPF)「MIH」を開発したと、20年11月に発表した。今後は他社に供給し、EVPFを採用したEVの販売により、27年に世界シェアの10%を獲得する計画を掲げている。EVPFをオープンにして、多くの企業に利用してもらえるように企業ごとに変更できる範囲を広くしている。

 EVメーカーとは、21年1月に中国のZhejiang Geely Group Holding(浙江吉利控股集団)と提携し、5月には米国Fisker(フィスカー)とも提携。EVの生産やコンサルティングサービスのレベル向上を図っている。また、日本のティアフォーと提携し、自動運転OS「Autoware」を採用する見通しであることが、21年3月までに分かった。このようにEVPFの付加価値価を高めている。

 トヨタ自動車は、エンジン車に対するクローズドな系列を構築し、強みを発揮してきた。しかし、21年12月にはEVに4兆円を投資し、30年にEVを350万台販売するという新方針を発表した。EVに慎重という評価を払拭するために、広報戦略を取らざるをえなかったのだ。

 異業種企業が自動車産業へ参入する場合の戦略比較を、すり合わせ対モジュール化、オープン対クローズの視点で整理した1)。これを、最近の動きを加味して、ソニーEVの「世界線」の視点で整理すると、図2のようにまとめられる。

図2 EV戦略比較とソニーEVの「世界線」
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図2 EV戦略比較とソニーEVの「世界線」
出典:著者作成

 ソニーは、得意技のセンサーとエンタメを生かし、オープンにEV各社にそれらを提供するのが最も実現性の高いEV参入の「経路」である。その次に可能性がある「本命」は、Magna SteyrのODMを活用して、ソニーブランドで少量生産する「経路」である。この場合、少量生産であるので、ソニーの直営店「ソニーストア」で販売することが考えられる。

 Magna Steyrの生産能力を超える大量生産という「大穴」を埋めるのが、鴻海のEVPFを利用することである。そうなれば、中国や米国のEVメーカーの支援も受けられる。また、日本のティアフォーが提供する、自動運転OS(基本ソフト)「Autoware」も採用が可能となってくる。Magna Steyrとの少量生産の後に、Hon Haiとの大量生産に移る可能性も無いとは言えないが、委託先を変更することになり障壁が高い。

 自動車ビジネス参入後のソニーには、系列を超えるビジネスイノベーションを起こしてほしい。つまり、少量生産か大量生産のどちらにしても、フルオープンアーキテクチャーでのEV量産に期待したい。