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 現在の米AMDは、まさにこの世の春を謳歌(おうか)しているかのように見える。2021年1~12月の通期売上高は、前年比68%増の164億3400万米ドルと過去最高を記録した。同社のPC用プロセッサー「Ryzen」、サーバーや組み込みシステム向けのプロセッサー「EPYC」はともに好調。さらにはGPU「Radeon」も、売り上げ規模は米NVIDIA(エヌビディア)の後塵(こうじん)を拝するものの、PC(パソコン)ゲーム向けやマイニング向けを中心に好調である。そして2022年も、すべての事業部門のさらなる成長によって、前年比31%増の215億米ドルの売り上げを見込んでいる。

 順風満帆に見える同社だが、懸念事項がないわけではない。第1に米Intelの復活。ここ数年、精彩を欠いていたIntelだが、2021年2月、CEO(最高経営責任者)にPat Gelsinger氏が就任して以降、CES 2022で発表した第12世代Coreプロセッサーの高評価など、復調の兆しが見えている。第2に、GPUでのNVIDIAとの新たな競争。メタバース関連市場の成長が期待されているが、NVIDIAのGeForceとAMDのRadeonでは、グラフィックス系ソフトの最適化実績でNVIDIAに分があると見る向きもある。第3に、あらゆる分野で、システムメーカーやサービスプロバイダーが、独自チップを開発する機運が高まっている点だ。標準チップビジネスを行うAMDは、大市場が独自チップに奪われると厳しいことになる。

 今回のテクノ大喜利では、対Intel、対NVIDIA、対独自チップという3つの対立構図を想定し、AMDの今後の戦略と行方を考える際の論点・競争要因について議論した。最初の回答者はGrossbergの大山 聡氏である。同氏は、チップレット技術の優劣がCPUなど半導体チップの競争力に大きく影響するようになった点に注目。特に、Intelとの間で激しく競争しているサーバー用CPU市場で、AMDに優位性があるとみている。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト)
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる) 1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】CPUの領域で、AMDとIntelの競争の行方を考える際に、注目したい指標・論点・競争要因は?
【回答】 PC市場における戦略、サーバー市場における戦略

 調査会社の米Mercury Research(マーキュリーリサーチ)によると、AMDはx86系プロセッサーで着実にシェアを伸ばしており、2021年第4四半期には25.6%というAMD史上最高のシェアを獲得、2006年の25.3%という記録を15年ぶりに更新したという。数量ベースでのシェアを考えれば、PC向けにどれだけ実績を伸ばせるかが重要である。

 PC市場はスマートフォンのような製品の進化があまり見られず、われわれユーザーの活用方法にもあまり大きな変化がない。強いて言えば、リモートワークの増加に伴うWeb会議での活用が増えたことくらいだろうか。コロナ禍に突入するまでは、PC市場は横ばいもしくは1ケタのマイナス成長、という状態が継続していた。買い替えサイクルも長期化する傾向にあり、大きな変動が見られなかった市場といえよう。

 この中でAMDがシェアを伸ばしている理由は、失礼を承知で申し上げれば「IDM型にこだわるIntelが苦しんでいる」ことが最大の要因のように見える。最先端プロセス開発で台湾TSMCに先行され、自身のプロセス開発の遅れがCPU出荷に大きく影響するなど、Intel自身の下振れがそのままx86系におけるAMDのシェア増加につながった、と筆者は見ている。

 もともとはAMDもIDM型だったが、自社工場を米GlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ)に売却してファブレスになってから、同社の経営は身軽になった。事実、GlobalFoundriesが7nmプロセスの開発を断念した際も、AMDは発注先をTSMCに切り替えることで難局を乗り切ることができたのである。まさにファブレスの強みを活用した結果といえよう。

 またMercury Researchによれば、AMDはサーバー市場でもシェアを伸ばしつつあるようだ。

 PC市場と同様、サーバー市場でも「IDMにこだわるIntel 対 ファブレスの強みを生かすAMD」という戦略上の違いが出たと見ることができる。ただし、ここでは同社のチップレット戦略にも注目する必要があるだろう。同社はPC向けプロセッサー「Ryzen」にもチップレット技術を活用しているが、サーバー向けプロセッサー「EPYC 7763」(チップレット活用)が、やはりチップレットを活用したIntelの「Xeon Platinum 8380」に比べてパフォーマンスに優れていることが、シェアの伸びに如実に表れている。

 この先、IDMであろうがファブレスだろうが、SoCベンダーによるチップレット戦略はますます激化することが予想される。ここは、注目すべき点と言えよう。