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 半導体産業の中でも、プロセッサーメーカーは、その時代のコンピューティングトレンドをリードする花形だ。そこでは、ITシステムの基盤となる部分で強い影響力を放つ、王者や覇者が君臨している。長年にわたってx86系CPU王朝を維持してきたのが米Intel(インテル)であり、AI(人工知能)の応用が広がってきた現在、GPUで米NVIDIA(エヌビディア)が新たな覇者として振る舞い始めている。こうした中、米AMDは、対Intel、対NVIDIAいずれにおいても、ナンバー2のポジションにいる。

 そのAMDが、FPGA最大手の米Xilinx(ザイリンクス)の買収を完了した。IntelとNVIDIAもFPGAメーカーを過去に買収しているが、今回の買収によってFPGAではAMDがナンバー1になる。AMDは、FPGAでのアドバンテージを活用して、どのようにプロセッサービジネスの最大化を図っていくのか。

 対Intel、対NVIDIA、対独自チップという3つの対立構図を想定し、AMDの今後の戦略と行方を考える際の論点・競争要因について議論しているテクノ大喜利。今回の回答者は、元 某ハイテクメーカーの半導体産業OB氏である。同氏は、Xilinxの買収をテコにした、データセンターなどで用いるアクセラレーター市場でのAMDの飛躍の可能性を論じている。

(記事構成は伊藤 元昭=エンライト)
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB)
某社リサーチャー
半導体産業OB(はんどうたいさんぎょうOB) 半導体産業をはじめとする電子産業全般で豊富な知見を持つ某ハイテクメーカーのOB。某国公認会計士でもある。現在は某社でリサーチャーを務め、市場の動きをつぶさにウオッチしている。
【質問1】CPUの領域で、AMDとIntelの競争の行方を考える際に、注目したい指標・論点・競争要因は?
【回答】 CPUは滅びゆく市場

 AMDがハイテク覇者を目指すのであれば、CPU市場はそれほど重要ではない。しかし、2030年に向けて、数倍の売り上げ成長と利益拡大で満足するのであれば、CPUは十分においしい市場となろう。要はAMDの立ち位置次第である。

 AMDは、CPU市場ではマイナープレーヤーであり、もし、ここで大成功を収めてシェア40%でも取れれば、売り上げは数倍、規模の経済が働いて利益はさらに大きく伸びる。

 今は、ライバルであるIntelが復調しているが、多分この先は、Intelはきつくなる。Intel 7(旧名称10nm Enhanced SuperFin)で生産されるサーバー向けCPU「Sapphire Rapids」が、またもや開発遅れという話も十分にあり得るし、ちまたではそういう無責任な臆測がかなり飛び交っている。過去のトラックレコード(経緯)を見れば仕方ないことだろうが。Intelが台湾TSMCにプロセスで追いつくのは、まだまだ先で、その間は、IntelがAMDに対して、かつてのように最先端のプロセス技術を基に圧倒的な競争優位を発揮するのは難しいであろう。

 しかし、CPU市場、特にx86系には、将来にあまり大きな夢を抱けない。PC市場は成熟化している。CPU市場をドライブするのはサーバー市場になるが、データセンターは、今後、省エネルギー型でないと建設を認められなくなる可能性がある。既にシンガポールでは、実際にそうなっている。そして、とあるOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test:パッケージングからテストまで請け負う製造業者)大手が出したデータセンター用プロセッサーの市場予想は、以下のようなものだ。

x86 CPU:292億米ドル(2020年) → 121億米ドル(2030年)
ARM/RISC-V CPU: 8億米ドル(2020年) → 149億米ドル(2030年)
GPUなどアクセラレーター: 60億米ドル(2020年) → 410億米ドル(2030年)

 電力効率が悪いx86系のCPUは、他のCPUに取って代わられ、そしてCPU全体で見ても、GPUなどのアクセラレーターに市場を蚕食(さんしょく)されて成長の果実を奪われることとなる。

 CPU市場でIntelと血みどろの争いをしている間に、成長市場で成功するチャンスを逸してしまう、などということにならないように願う。