ウクライナ危機において、日本政府は、天然ガスを採掘するサハリン2から撤退しないことを明らかにした。経済制裁の強化を求められる中ではあるが、抜けるに抜けられない状況にあることを露呈している。本来、中東に集中していたエネルギーの調達先を分散させることを目的として開発したサハリン2だが、将来の不安要因に転じてしまったことは確かだ。
ウクライナでの惨状を見て、日本では台湾有事に関する懸念の現実味を実感するようになった。日本の電子業界やIT業界にとっては、中国大陸とも台湾とも結びつきが強く、リアルさを増してきたリスクに今後どのように備えたらよいのか悩みを抱えているところも多いことだろう。その強い結びつきをどのように整理するのか考え時を迎えている。ただし、サハリン2以上に抜けられない状況にある事案もあるかもしれない。
ウクライナ危機が電子産業やIT産業に及ぼす影響を議論しているテクノ大喜利。今回の回答者はGrossbergの大山 聡氏である。同氏は、電子業界での日本と中国の間の結びつきの質を考えると、日本が中国から得るモノよりも、中国にこそ日本から得たいモノが多くあることを指摘。ウクライナ危機を横目に見て今後の施策に悩む中国に対して、産業界での日本優位の状況を正しく認識・洞察して経済外交上の優位を築く、したたかな戦略を推し進めるチャンスがあることを示唆している。
Grossberg 代表

この原稿を書いている現時点では、まだ確証は得られていないが、中国でのスマートフォンの生産量が急に落ち始めた、米NVIDIA(エヌビディア)のGPU受注が落ち始めたなど、今回のウクライナ危機が原因ではないかと思われるような情報が、断片的に飛び交うようになってきた。
地理的に隣接している欧州諸国では、東アジアに位置する我々よりもずっと身近な危機を感じているだろうし、国や地域の政策は有事状態になっているはずだ。民間人の個人消費にも、心理的な要因から、少なからぬ影響が出ていると思われる。
特に、買い替え需要の対象になるような民生機器、例えばスマホ、パソコン、テレビ、各種家電などは、もう少し事態が落ち着くまで買い替えを見合わせるような傾向が強まるのではないだろうか。少なくとも、有事に優先順位が高まることは考えにくく、有事ならではの一部の産業機器の需要が高まるなど、通常とは異なる傾向が表れるのではないか、と筆者は予測している。