2022年3月2日、半導体業界やIT業界の大手企業10社が、複数のチップレット(小さな半導体のダイ)を相互接続するための通信方式のオープン規格「Universal Chiplet Interconnect Express(UCIe) 1.0」の仕様を公開し、その活用と普及に向けたエコシステムの整備を促進するコンソーシアムを設立した。UCIeは米Intel(インテル)開発した技術である。今回参画したその他の9社、台湾Advanced Semiconductor Engineering(ASE)、米Advanced Micro Devices(AMD)、英Arm(アーム)、米Qualcomm(クアルコム)、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)、台湾TSMC(台湾積体電路製造)、米Google(グーグル)、米Microsoft(マイクロソフト)、米Meta Platforms(メタ・プラットフォームズ)は、既にその仕様を承認している。
1つのパッケージ内に複数チップを集積するための技術であるチップレットは、高機能なSoP(System on Package)を開発・生産する技術として、また最先端の微細プロセスで大規模チップを効率的に生産するための技術として、欠かせない存在になりつつある。ただし、これまでは開発・生産する企業ごとの独自技術でチップレット間をつないでいたため、複数社からチップレットを集めて混載させることが困難だった。
チップレットの外部仕様を標準化したUCIeの登場によって、独自チップ開発の加速や半導体産業の構造が大きく変わる可能性がありそうだ。今回のテクノ大喜利では、半導体のメーカーとユーザーのビジネスに与えるUCIeのインパクトについて議論した。最初の回答者はGrossbergの大山 聡氏である。同氏は、UCIeの登場を境に、半導体メーカー間の競合やユーザーとの協力関係の姿が大きく変化する可能性を指摘している。
Grossberg 代表

UCIeコンソーシアムが誕生する前から、1つのパッケージに複数メーカーのチップ(あるいはチップレット)を搭載する考え方はあった。その重要性については業界でもかねて認識されていたはずである。しかし、それがなかなか活性化しなかったのは、そのパッケージ化されたデバイスがどの企業の製品なのか、品質やスペックについて誰が責任を負うのか、という点を明確にできなかったことが大きな理由として挙げられるのではないか。チップレット同士を接続するインターフェースを標準化するUCIeが誕生したことで、この問題が解決されるわけではない。しかし、逆に言えば、こうした問題を乗り越えてでも実現してほしい、という認識が高まれば、今度こそ「統合デバイス」の活性化につながる可能性がある。
例えば、Google、Microsoft、Metaなどのユーザーが顧客となって「A社製とB社製のチップレットを組み合わせて1つのパッケージに統合してほしい」と仕切ることができれば、A社やB社が単独では提供できない技術を手に入れることができる。デバイスメーカー同士の競合はなくならないが、それ以上に「どのように協業できるか」という点が重要視されるようになることだろう。そして、各デバイスメーカーには商機が広がり、システムメーカーにはより優れた技術を入手しやすくなる、という流れが形成されるのではないだろうか。
さらに、一度実績が出来てしまえば、そして関与したデバイスメーカーとシステムメーカーが合意すれば、同等製品をA社およびB社から別のシステムメーカーへも供給できるようになるかもしれない。