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 米Appleの「iPhone 14」シリーズ(発売は2022年9月)は世界的な値上げが注目された。日本では円安のあおりを受け、前同等機種から2~3万円価格が上昇している。世界的には大幅な価格上昇はなかったが、最低価格が据え置きだったのは米国や中国、インドの3カ国のみ注1)。こうした状況でも、発売当年の生産数量としては過去最高となりそうだ。

注1)3カ国の全体に占める割合は55%程度。

 みずほ証券は、2022年におけるiPhone 14シリーズの生産数量を9200万台と予想する。現状の販売状況は、「iPhone 14」「iPhone 14 Plus」(以下、14/同Plus)があまり振るわず、「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」(以下、14Pro/Pro Max)が好調となっている(図1)。

図1 iPhone最終製品アセンブリー数量通期予想(単位は百万台)
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図1 iPhone最終製品アセンブリー数量通期予想(単位は百万台)
(出所:みずほ証券エクイティ調査部)

 2022年内はiPhone 14シリーズや既存機種注2)で積極的な生産を続け、生産数量が出荷数量やセルスルー(実売数)を上回るだろう。iPhoneの販売は2020年以降好調を維持してきたが、既存機種の完成品在庫の水準はサプライチェーンでの問題が重なり、正常~やや低めで推移しているからだ。2022年末には在庫水準も全体で正常化し、強気な生産計画を維持する理由が薄れていく。

注2)ローエンドモデルの「iPhone 11」と「iPhone SE」を除く。

 そのため、2023年第1四半期以降の生産はほぼ実需水準に戻ると想定する。販売が好調とはいえない14/同Plusは大きめの下振れ調整、堅調な14 Pro/Pro Maxは小さめの調整、販売継続で在庫補充が必要な「iPhone 13」「iPhone 13 Mini」「iPhone 12」は増産するとみる。

 iPhoneの2023年第1四半期の生産計画(みずほ証券の推定)は、前年同期比2%減~6%増となる6000万~6500万台程度。対して、みずほ証券の生産台数予想は同15%減の5200万台と慎重である。なお、同期の生産は年末に向けた最終需要の変化やAppleの見通しの変化によって上にも下にも振れる可能性がある(図2)。

図2 iPhone最終製品アセンブリー数量四半期ごと予想(単位は百万台)
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図2 iPhone最終製品アセンブリー数量四半期ごと予想(単位は百万台)
(出所:みずほ証券エクイティ調査部)

 慎重な予想の理由は主に3つ。(1)Appleが景気の需要への影響などを考慮し、保守的な調達姿勢に転じる可能性、(2)14/同Plusは販売が好調とはいえず、さらなるダウンサイド(下振れ)リスクがある、(3)Appleが半導体や電子部品・部材、一部材料などのサプライヤーに対して発注を絞る可能性がある、である。

 (3)のAppleからサプライヤーへの発注を絞る可能性があるのは、価格交渉を有利に進めたいからだ。iPhone 14シリーズの価格引き上げは最低限だった一方、ドル高が進行している。これはAppleの収益への悪影響につながる。米ドル建てで支払われるサプライヤーにとってドル高は好影響になる。ここに対してAppleが値下げを要求してくる可能性がある。さらに、Appleのサプライヤー数は多く、新規参入企業を目指すサプライヤーも多いことから、Appleが有利に交渉を進める可能性が高い。

 2023年のiPhone生産予想は、前年比6~8%減となる2億3000万~2億3500万台とみる。同年第1四半期はわれわれの予想水準となる前年同期比15%減であれば、厳しめのスタートとなる。