アーティスト支援拠点「THE CAVE」はこの秋3年目を迎える。中央が筆者
アーティスト支援拠点「THE CAVE」はこの秋3年目を迎える。中央が筆者
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4人をつなげた一冊の本

 THE CAVEの発端は、リノベーションまちづくりの可能性に気づいた私が、その旗振り役の嶋田氏と出会ったことだ。図らずも彼が北仲BRICK&WHITEの入居者だったことには、運命に近いものを感じる。リノベーションまちづくりを実践するコンセプトを二人で練った結果、「横浜が諦めかけている創造都市の流れを、民間サイドの働きかけでもう一度、取り戻そう」との思いで一致したのは、ある意味、自然な流れだった。そして、アーティストを巻き込むために、嶋田氏のスカウトで劇作家の石神氏がチームに加わった。

 方向性が決まっても、事はそう簡単には運ばなかった。支援の拠点となる不動産物件が見つからなかったのだ。民間の取り組みとしてアーティストを支援しようといっても、物件がないことには話が進まない。

 ここでもまた、運命のいたずらが起きた。不動産業を営む若手経営者との出会いだ。彼は諸事情があって、今はメディアにあまり露出できない。ここでは仮に、山田氏としておこう。彼は横浜のとあるエリアで商業ビルやマンションなどの賃貸業を営んでいる。

 その山田氏の管理物件に住んでいたのが石神氏だった。ちょうど、前回紹介した嶋田氏の書籍『ほしい暮らしは自分でつくる』が出版されたころだ。書籍を通じて嶋田氏とリノベーションまちづくりに共感していた山田氏は、ひょんなことから石神氏が嶋田氏に近いことを知った。そして、石神氏を通じて嶋田氏と出会うことになる。嶋田氏から、リノベーションまちづくりとしてのアーティスト支援拠点の話を持ちかけられた山田氏は、二つ返事でプロジェクトへの参加を快諾した。

 今振り返ってみれば、奇妙な縁でつながった4人である。しかも、その媒介役として、私のかつての古巣である日経BP社が出版した本が関わっていたというのも、不思議なものだ。

 山田氏がCAVEの仲間に加わってから、物件が見つかるまでは早かった。やはり、餅は餅屋といったところか。彼が見つけてきたのは、JR京浜東北線関内駅から徒歩1分にある、「イセビル」の地下1階の物件だった。駅前の一等地にありながら、15年以上にわたって空き物件で、今の横浜の不動産市場を如実に表していた。それにしても、地下とはいえ15年はさすがに長い。

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