PR

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)で地震や津波のシミュレーションを手掛ける是永眞理子氏。リーダーとして、社会的責任の重いプロジェクトを率いる。仕事だけでなく、3人の育児を通じて得た経験も自らの糧にしている。 (聞き手は八木 玲子=日経 xTECH)

どんなお仕事をしていますか。

 地震や津波などの自然現象にまつわるシミュレーションを手掛けています。国や企業がお客様です。重要施設にどんな被害が起こり得るかを予測したり、今後数十年のうちにどのくらいの確率で地震や津波が発生するかを規模別、地点別に予測したりしています。

入社以来、この分野一筋なのですか?

 はい。大学時代の専攻は雲物理で、粒子を1つひとつ解析して、雲がどう発達するのかをコンピューターでシミュレーションしたりしていました。就職時の志望も、シミュレーションができる会社。専門は気象だったので、最初は気象予測の専門会社に就職しようかなと思っていました。

 でも、当社の前身であるCRCソリューションズの話を聞いたら、「気象だけでなくいろいろな分野の人が情報交換しながら仕事をしている」と知って興味を持ちました。自分の専門以外の人とたくさん交流できるのは面白そうだ。そう思って入社しました。最初は風力とか太陽光とか気象の分野を担当していたのですが、途中から、地震や津波のシミュレーションを手掛けることになりました。

伊藤忠テクノソリューションズ 科学システム本部 原子力・エンジニアリング部 耐震工学技術2課 是永眞理子課長
伊藤忠テクノソリューションズ 科学システム本部 原子力・エンジニアリング部 耐震工学技術2課 是永眞理子課長
(撮影:菊池 くらげ)
[画像のクリックで拡大表示]

 部内には、実際にいろいろな分野の出身者がいました。私は理学系ですが、工学系の人もいれば、人文系専攻だったけれどもコンピューターが好きでこの部署に来たという人もいました。多種多様なバックグラウンドを持った人と一緒に仕事をするのは、とても刺激的でした。

 みんなで1つの問題に取り組もうというときに、同じ分野の人だけで集まると、何度も同じ道を通って結論に向かうことになりがちです。でも別の方向から意見を出す人がいると、新しい気づきがあります。

 自然を相手にしていると、答えは1つに決まりません。例えば津波の場合、波を引き起こす場所がとても広くて、さらに全体が一様に動いているわけではありません。時間差があるなど、いろいろな要因が複雑に絡み合っています。たくさんあり得る答えの中から、最もそれらしいものがどれかを検討する。そうしたときに、他分野の人が集まって知恵を出し合えるのは良いことだと考えています。社内のメンバーだけでなく、お客様とも何度も議論しながら、抜け落ちがないかと科学的に検証します。

津波シミュレーションのモデル図。左が平常時、右が津波発生時
津波シミュレーションのモデル図。左が平常時、右が津波発生時
(出所:伊藤忠テクノソリューションズ)
[画像のクリックで拡大表示]

 シミュレーション後のチェック作業もものすごく厳密に実施します。少しミスがあっただけでもお客様に迷惑が掛かりますし、最終的には国民の皆様に迷惑が掛かる。どこかに穴があるんじゃないかと何度も確認しながら埋めていく、という作業をしています。過去に起こったことがない規模だけれどこの先起こるかもしれないという災害を、どれだけ精度良く、抜け落ちなく予測するかということにも、一所懸命に取り組んでいます。

社会的責任が大きいお仕事ですね。

 はい、そう思います。その分、やりがいもあります。国内だけでなく、世界に対して日本の津波の技術を伝えることで、災害が起こることを前提に対策できるようになります。

 よく“正しく怖がる”ことが重要だといわれますが、災害の存在を前提に自分の生涯を設計したり、リスクを考えたりするための判断材料を提供できる。そんな仕事に携わっていることにやりがいを感じています。