自己効力感を高めるための4項目

 私がここまで到達できたのは、試行錯誤しながらも、自己効力感をうまく高められたからだと考えています。バンデューラは、自己効力感を形成するうえでの情報源として以下の4項目を挙げています。

  1. 個人的達成(成功体験):何かをやり遂げた、成功したという実体験
  2. 代理学習(他人の成功体験):他人が成功した体験を聞いたり、観察したりすること
  3. 社会的説得(言葉による励ましなど):他の誰かに、「できるよ」と励ましてもらえること
  4. 情緒的覚醒(気分による変化):リラックスする、自分の身をおく環境を変える、さまざまな想像をするなど

 大の苦手である英語の勉強を始めるのは、私にはとてもハードルの高いことでした。それでも一歩を踏み出せたのは、「情緒的覚醒」があったからでした。自分のキャリアについて思いをめぐらせる中で、「コミュニケーション力という自分の強みをより強化するために英語が必要だ」と考えるようになったのです。イヤイヤ勉強をするのでなく、自分の良さを伸ばすために学ぶのだと思えたことで、英語学習を始めてみようという決意ができました。

 途中で挫折することなく学習を続けられたのは、「個人的達成(成功体験)」のおかげです。中国語という別の言語の習得がうまくいったことを思い出し、それと同じ方法を採ればやれるかもしれない、と思うことができました。他人とのコミュニケーションという、自分の得意分野を生かした学習方法を選んだことも、プラスに働きました。さらにレッスンを重ねる中で自分の上達を日々実感し、自己効力感はより高まっていきました。

 先生にも助けられました。英語に自信が持てない私を、明るく励ましてくれる先生に運良く出会えたのです。この先生となら苦手意識を克服できるかもしれない、という気持ちが、勉強の後押しになりました。これは、「社会的説得(言葉による励ましなど)」そのものです。

 自己効力感は、ある意味で「自信」と同義です。「自分にはできる(I can do)」と思うことでやる気が高まり、周囲を巻き込むパワーにもつながっていきます。

 もちろん、常に自分に自信を持ち、ポジティブでいるのは非常に難しいことです。私自身も英語の学習を通じて、自己効力感の低下と何度も戦いました。

 しかし「自分にはできない」と自信をなくしかけたとき、先ほど紹介した4項目を思い出してみてください。そうすれば、自分の自己効力感を高めるためのヒントが見えてくるはずです。また周囲に自己効力感が低下している人がいたら、ぜひ励まし(社会的説得)をしたり、気分転換(情緒的覚醒)を薦めてみたりしてください。

多田 歩美(ただ あゆみ)
キャリアコンサルタント
多田 歩美(ただ あゆみ) 2006年、大手自動車メーカーに入社。研究領域の情報システム部門を経て、現在は本社のグローバルITインフラ戦略業務に従事。2014〜2016年には業界団体でCAE(コンピュータ支援設計)領域でのクラウド活用タスクのリーダーを務める。社外活動としてはIT勉強会に積極的に参加・主催。2016年には米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の「Community Hero」に認定される。また、個人的な生涯学習としてキャリアカウンセリングの勉強を始め、2013年にCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格を取得し、2016年国家資格キャリアコンサルタントに登録(写真:菊池 くらげ)