「クラウドを活用して、多くのメリットを感じています」――。満員の聴衆を前にこんなスピーチをしたのは、2014年11月のことでした。舞台は、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の年次イベント「re:Invent」。AWSユーザーの一人として登壇することになった私は、20分ほどのスピーチと40分ほどのパネルディスカッションを英語でこなしました。

2014年開催の「re:Invent」でのスピーチの様子
2014年開催の「re:Invent」でのスピーチの様子
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 実は私は、決して英語が得意でも、堪能でもありません。むしろ、長年にわたって相当強い苦手意識を持っていました。実際、入社直後に受講したTOEICの点数は300点台でした。いまだに苦手意識を完全には克服できていませんが、事前準備を重ねた上で英語のスピーチをしたり、仕事に最低限必要な会話を成り立たせたりできるレベルには達しています。

 なぜ、英語力を向上させることができたのか。自分なりに振り返ってみると、そのカギは「自己効力感(self-efficacy)」にありました。

英語は大の苦手だった

 自己効力感とは、物事に取り組む際に、「自分はこれができそうだ」「きっとできる」という気持ちを持てるかどうかです。アルバート・バンデューラというカナダ人の心理学者が提唱した社会的認知理論の中で使われている言葉です。

 自己効力感の高さは、過去の経験に大きく影響されます。過去に取り組んだ物事がうまく進み、自分自身に良いイメージを持っている人は自己効力感が高い傾向にあります。何かを始める際も、「自分ならできる」と思えるのです。反対に、うまくいかなかった経験を持つ人は自己効力感が低く、「自分はどうせできない」「また失敗する」といった思いを抱きがちです。

 私の英語に対する自己効力感が非常に低かったのも、過去の経験によるものでした。苦手意識を持つようになった最初のきっかけは、高校時代。英語のクラス分けテストで大失敗して、能力別で最下位のクラスに振り分けられました。頑張って上のクラスに上がろうと努力はしましたが思うようにいかず、徐々に英語の成績アップは諦めるようになりました。