クラウド業界で活躍する多田歩美さんによる本連載。前回まで、著者自身の経験を通じて、壁を突破しキャリアを切り開くためのノウハウを紹介してきた。今回からは、ITの現場でよくある悩みごとに対して、著者がアドバイスを贈る。
 まずは、上司に不満を抱く若手の悩みを取り上げる。

今回の悩みごと
職場の上司が、「若いから」と自分を認めてくれません。自発的にいろいろな提案をしたいのですが、「まだ何も知らないのだから、指示されたことをすればいい」と言われます。せっかくやる気を持って入った会社なのに、このままではモチベーションが下がるばかりです。

 自分自身を認めてくれないと感じる環境に身を置いていると、自信を持てなくなりつらく感じることが多いでしょう。モチベーションが下がるのも無理はありません。私も同じような経験はありますし、周囲からも同様の相談を受けます。

 モチベーションの低下に影響を与えているのは、「承認欲求」です。人間であれば誰しも自分を価値ある存在だと思いたがっていますし、他人にもそう思ってほしい、承認してもらいたいと願う気持ちを持っています。

 理解しておきたいのは、承認欲求には「他者承認」と「自己承認」の2つのタイプがあることです。他者承認は他人から認められること、自己承認は自分で自分を認めることを指します。

 今回のご質問では、他者承認が得られないことがモチベーションに影響していると考えられます。他者に承認を求める気持ちは、誰にでもある健全で自然な感情です。しかし、他者に認められなければモチベーションが上がらないという状況は、望ましくありません。自分のモチベーションが他者に踊らされてしまう、つまり他者依存に陥ることになりかねません。

 ここで重要になるのが、自己承認です。他者承認をコントロールすることは非常に困難ですが、自己承認はある程度のコントロールが可能です。上司を変えようとするのではなく、まずは自己承認に意識を向けてみましょう。

自分で自分を認めてあげる

 自分自身を認めるためには、自分のことを受け入れてくれる場所や組織、受け入れてもらった経験が重要になります。これは、社会的欲求(帰属欲求)と呼ばれています。

 あなたが今所属している会社や組織には、上司以外の仲間が誰かしらいるのではないでしょうか。社外活動や、友人同士や趣味仲間のグループなど、会社以外の組織や集団に属している人も多いでしょう。