一定規模以上の企業のIT部門では分業が進んでおり、技術的な面については委託先やITベンダーにお任せというところが少なくありません。また、IT部門の認可を得ずに社内ユーザーが外部のITサービスを利用する、いわゆる「シャドーIT」に頭を悩ませている人も多いでしょう。
ではなぜ、利用部門はIT部門に相談しないのでしょうか。私の経験上、理由は2つあります。
まず、IT部門を妨害者のように感じていること。相談しても何かにつけてダメな理由を並べられてしまい、話が前に進まないというものです。もう1つは、専門知識がなくても利用できる便利なクラウドサービスが増えているため、特に相談する必要性を感じていないことです。
前者のパターンは、利用部門とIT部門の信頼関係が十分に築かれていない状態といえます。私自身は、IT部門の仕事はダメな理由を探すことではなく、できる方法を探して検討することだと考えています。そのために心がけてきたのが、利用部門との対話です。できるだけ現場に足を運び、どんな仕事をしているのかを理解することを重視しています。こうした姿勢を示した結果、ユーザーとの信頼関係を築くことができ、ユーザー側からも積極的に相談をしてもらえようになりました。またシャドーITが存在していた場合、そのことにも気づきやすくなりました。
後者の、便利なクラウドサービスが増えていることについてはどうすればよいでしょう。CASB(クラウド・アクセス・セキュリティ・ブローカー)など許可していないサービスの利用を制限する仕組みを導入することで、シャドーITは防止できます。しかし、ただ利用制限をするだけでは、そのサービスの利用を選択した利用部門の生産性を下げてしまう懸念があります。
大切なのは、そもそもなぜこうしたサービスを利用する必要があるのかに目を向けることです。その上で、会社としてどんなリスクがあるのか、他の代替手段はないのかといったことを利用部門と確認し合います。利用部門には、サービス選択をする上で気をつけるポイントを理解してもらい、IT部門としてもそこで得た内容を利用部門へのサービス向上に結びつける努力をします。こうした話し合いをする上でも、利用部門とIT部門の間の信頼関係は重要です。
クラウドなら自分専用のデータセンターが手に入る
相談者は、利用部門から信頼される存在になるために、技術力を高めたいと考えています。これは確かに重要なポイントです。では、そもそも技術力とはどんな力なのでしょうか。