私は、「知識」と「実践力」の両方がそろっている状態を「技術力がある」と考えています。実践力とは、知識の応用力とも言い換えられます。

 企業のIT部門に所属している人の中には、自分で手を動かさない、または動かせないという状態であることが少なくありません。このため、「知識」はあるが、「実践力」が圧倒的に不足している状態に陥っているケースが多いと感じています。

 この「実践力」も、大きく2つに分けられると考えています。1つは、テクノロジーを使いこなす力。そしてもう1つは、人を動かす力です。各企業でデジタル化が叫ばれる中で、IT部門には、社内外の関係者を巻き込み動かしていく役割が求められているのです。

 テクノロジーを使いこなす力に関しては、クラウドサービスの充実によって、個人でも実際に手を動かして実践力をつける学習がしやすくなりました。私のお薦めは、『Amazon Web Services 基礎からのネットワーク&サーバー構築 改訂版』を読みながら実践することです。クラウドなら煩わしい事前準備をすることなく、まるで自分専用のデータセンターを手に入れたかのように様々なチャレンジができます。

 オンラインの学習サービスも有効です。例えば、「Qwiklabs」というサービスは、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)だけでなく、GCP(グーグル・クラウド・プラットフォーム)に関しても、様々なテーマに沿ったハンズオン用の教材と環境を準備しています。無料で利用できるコンテンツもあります。

社内を動かすヒントは、社外からも得られる

 人を動かす力については、経営視点や業務視点を持った上で、その業務に必要な関係者をつなぎ合わせていくスキルが重要です。経営視点や業務視点というと難しく感じますが、ここでいう経営視点とは、会社のビジョンや戦略を理解した上で、全社にとって何が最適であるかを見極める力を指します。業務視点というのは、当該部門の社内での役割を理解した上で、本来やるべき仕事、やらなくもよい仕事を見極める力です。

 これらは、幅広い関係者を巻き込む上で不可欠の力です。IT部門や各事業部門だけの事情で話をしても、共感や理解を得ることはできません。より多くの関係者の理解を得るには、共感を引き出す視点、つまり経営視点と業務視点を持ち、それをベースにして話を進めます。こうすることで、皆でどうやったら物事が前に進むかを考え、実行できるようになります。