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Q.出張先のホテルで転んでケガをしました。仕事を終えてホテルに戻り、部屋で缶ビールと弁当で夕食を済ませたあとのことです。ホテルに帰ったあとなので、労災は認められないのでしょうか。

 業務中のケガは労災(労働災害)が適用され、プライベートタイムでのケガは適用されません。しかし、出張中のプライベートタイムのケガについては一概には言えません。質問者のケースでは、出張期間中の日常行為として、労災が認められる可能性もあります。

 なお、労災か否かの判断は筆者でも会社でもありません。労働基準監督署に申請して判断されるものです。

出張中の旅程は全て業務命令下?

 宿泊を伴う出張では、当然ながらプライベートタイムが多くなります。ホテルが自宅の代わりです。当然、平日の業務終了後にプライベートの買い物や食事などを行います。

 長期出張の場合は、祝日や休日を挟むこともあります。その間は会社の業務命令で出張先にいるわけで、広く解釈すればプライベートタイムも業務に準じて取り扱うことになります。出張で自宅を出てから帰るまでを対象としているのです。ただし、その間に起こったプライベートのケガが全て労災適用になるわけではありません。

 結論から言うと、出張中に積極的な私的行為に及んだ結果でのケガは対象になりません。一般常識で考えて、それは個人的な興味による行為だろうと思える場合はダメす。

 例えば、以下のようなケースです。

・出張の合間に観光地に行った
・宿泊するホテルの浴室でなく、温泉街に行った
・居酒屋やカラオケなどで盛り上がった
・海に近かったので、合間に海水浴や魚釣りを楽しんだ

 こうした場合は、積極的に私的行為を行ったと判断されるでしょう。逆に言えば、普通の生活で必要な行為でのケガなら、労災として扱われる可能性があります。

会社判断はしないこと

 会社は労災かどうかの判断をしないことです。出張、そして谷間の休日も含めて会社判断は禁物です。社員の立場で「申請する」を前提に考えればよいでしょう。特に出張は、業務時間とプライベートタイムが期間内に混在するので、適用の判断も広く解釈される場合があります。

 筆者も顧客からいろいろな出来事でのケガで労災になるかと聞かれます。考え方は伝えますが、労災が適用されるか否かは労働基準監督署が行うものであり、判断を仰ぐべきだと付け加えています。

杉本 一裕(すぎもと かずひろ)
1985年メーカー系IT企業に入社。多数の大企業にて勤怠・給与・人事制度の業務コンサルティングを手掛ける。在職中の2007年には総務省年金記録確認/大阪地方第三者委員会の専門調査員を兼務。退職後、社会保険労務士事務所のSRO労働法務コンサルティングを開業。IT企業をはじめ、製造業や病院、大学、鉄道、販売流通業など幅広い業種のコンサルティング業務に従事。労務リスク回避や労務管理に関する専門家として、 講演や執筆活動も行っている。

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