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 ただし、有給休暇は社員の好きな時にいつでも取得できるわけではありません。事業の正常な運営ができない場合は、有給休暇の取得日を変えてほしいと上司も言える権利(時季変更権)があります。それでもこれは、係長や課長クラスが困る程度では使えないと考えるべきでしょう。時季変更権の行使のハードルは高いのです。

電話がつながるかを聞きたい上司

 ここまで社員の権利を中心に述べましたが、社員も協力する姿勢が必要です。重要な業務を担当する社員ほど、顧客やプロジェクトメンバーから頼りにされます。特に顧客先で運用テストを実施していたり、本番稼働後の不慣れな時期だったりする場合、何かあったら連絡を取りたいと周囲が考えるのは自然です。

 上司もできる限り連絡しないはずですが、何が起こるか分かりません。電話ができる状況なのかを確認したい場合もあるはずです。

 法的には有給休暇の取得理由や行先などを答える義務はありません。しかし電話が通じる時間などの情報交換は、信頼関係の中で良好にやることが大切です。もちろん上司は些細なことで有給休暇中に連絡してはなりません。部下も楽しくない休暇になってしまいます。

杉本 一裕(すぎもと かずひろ)
1985年メーカー系IT企業に入社。多数の大企業にて勤怠・給与・人事制度の業務コンサルティングを手掛ける。在職中の2007年には総務省年金記録確認/大阪地方第三者委員会の専門調査員を兼務。退職後、社会保険労務士事務所のSRO労働法務コンサルティングを開業。IT企業をはじめ、製造業や病院、大学、鉄道、販売流通業など幅広い業種のコンサルティング業務に従事。労務リスク回避や労務管理に関する専門家として、 講演や執筆活動も行っている。