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Q.現在、小規模なソフト会社に勤務しており、給与は基本給に残業分が含まれる形で支給されています。たとえ長時間残業をしても残業手当は定額です。本当はもっともらえるはずだと思うのですが、この会社はおかしくないのでしょうか。

 おかしいというより「ブラック」な会社です。いわゆる未払い賃金(残業代)に当たりす。今の会社に特別な感情がなければ、転職を考えてはいかがでしょうか。労働基準監督署の調査でも「定額残業」がキーワードとなり、いずれ問題を疑われ、チェックの対象になると思います。

 定額残業はブラック企業の象徴とも言えますが、会社にとっては言い分もあります。それは事務の効率化です。残業手当を一定にすることで、月々の残業時間の管理が不要になるという理屈です。

 しかしこれは大きな勘違いです。確かに毎月の残業が定額残業よりも少ない場合は事務が楽になるかもしれません。例えば10時間分の定額残業手当を払っており、毎月数時間しか残業がなければ手当計算は不要です。しかし実際の職場では、残業時間が定額残業を下回るのは稀。特に残業が多いSEやプログラマが在籍するソフト会社で定額残業を運用していれば、ブラック企業だと疑われても仕方がありません。

 仮に残業代を抑えるために定額残業を導入しているなら、それは完全にブラック企業です。質問者の会社もブラック企業の疑いがあり、定額残業の運用を早急に改めるべきでしょう。定額残業手当を上回る残業があれば、会社はその差分を支給しなければなりません。

 給与計算を手作業で行っていた時代とは違います。残業時間を入力すれば自動で給与計算される時代です。多くの企業では、勤怠管理システムから月々の集計値を給与計算システムに入力・連動しています。もはや定額残業が事務を楽にすることはありません。

基本給に残業手当が含まれているのが問題

 そもそも基本給の中に、定額残業手当が含まれている運用が問題です。基本給とは別に〇〇時間分の残業代として別途支給し、社員にもきちんと説明すれば状況も変わってきます。

 賃金規程や労働契約書にもそれらを明記する必要があります。当然、定額残業を上回る部分は差額として支給しなければなりません。昇給時は残業単価も変わるので、都度、手当額の見直しも必要です。

 定額残業は、ニュースでもよく取り上げられる未払い残業問題による遡及支払の原因の1つです。既に導入しているケースが多い中小企業ではすぐに廃止すべきです。

杉本 一裕(すぎもと かずひろ)
1985年メーカー系IT企業に入社。多数の大企業にて勤怠・給与・人事制度の業務コンサルティングを手掛ける。在職中の2007年には総務省年金記録確認/大阪地方第三者委員会の専門調査員を兼務。退職後、社会保険労務士事務所のSRO労働法務コンサルティングを開業。IT企業をはじめ、製造業や病院、大学、鉄道、販売流通業など幅広い業種のコンサルティング業務に従事。労務リスク回避や労務管理に関する専門家として、 講演や執筆活動も行っている。

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