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Q. IT企業の人事部に勤務しています。引っ越し後の新住所を、3年間届け出なかった社員がいます。新住所はより会社に近くなったのにもかかわらず、引っ越し前の住所は実家のままで会社から遠いのです。本人は分かっていながら、実家と会社間の高い通勤定期代をもらっていたと認めています。返還させたいのですが問題ないでしょうか。

 通勤費の不正受給については、善意悪意にかかわらず多数の相談があります。故意に行っていた質問のようなケースから単純に届け出るのを忘れていたケースなどさまざまです。相談で一番多いのが、通勤定期代を支払っているのに自転車通勤していたというもの。健康のためという理由で悪意なく通勤していた社員もいるようです。

 冒頭の質問は、筆者が経験した例です。同様の相談が毎年のようにあります。事案によっては返還を求めた、あるいは懲戒処分を行った会社もあります。質問のケース以外には上述の「通勤定期代を支給しているのにバイクや自転車通勤をしていた」「高い料金の通勤ルートで申告し、実際は安いルートで通勤していた」などです。

 筆者は通勤ルートについては、一定程度の容認は必要だと思います。例えば、迂回経路により定期券を買っている場合です。不正受給が目的ではないので返還まで問題にする必要はなく、容認でよいでしょう。専門学校やスポーツジム、介護施設や幼稚園の最寄り駅などに行くための経路延長を含みます。

故意の場合は返還、懲戒処分も視野に

 不正受給による過払いの通勤費分は、会社が支払う必要がなかったお金です。これは不当利得であり返還を求めることができます。会社が返還請求できる時効は10年間。返還させる前に、まずはなぜそうしていたのかをヒアリングしましょう。

 社員に事情を聞けば故意でない場合も多くあります。例えば悪意なく届け出のルートや手段以外で通勤している場合です。そういった事情を考慮した上で対応を考えてください。返還させるにしても支払い方法(一括/分割)や返還金額(全額/一部)を検討すべきです。

 ヒアリング結果を考慮して、懲戒処分も視野に検討するとよいでしょう。通常は口頭注意で済ませる、故意で悪質な場合は減給や出勤停止処分まで行うといった判断です。