Q. IT企業勤務です。テレワーク運用で、通勤手当を出社日数に応じて後払いにする案が出ています。私はテレワーク派なので少額になり、定期券を買えなくなります。しかし、スポーツジムに通うし休日も電車に乗るので定期券が欲しいのです。この後払い方式に反対する、参考になる言い分はないでしょうか。
言うまでもなく会社は、出社して働いてもらうために通勤手当を支給しています。プライベートでの乗車については、会社は関係ありません。もし仮に1カ月まるまるテレワークで会社に行かなかったとして、それでも通勤手当は支給してほしいというのは無理があります。
IT業界ではテレワークがニューノーマルな働き方の1つになりそうです。通勤手当の見直しを検討している企業からの相談も多くなりました。質問のケースのように出社日数に応じた支給は少額になり、不満に感じるかもしれません。会社の担当者は、丁寧に説明しながら進めてください。
先払い後払い、通勤手当の支給方法はさまざま
そもそも会社にとって通勤手当を支払うという義務は、法的にはありません。よって通勤手当の支給がない会社もあります。ただし、社員募集や採用時に「通勤手当あり」としておいて入社後に支給がなければ、契約違反です。通勤手当ありと宣言している会社は自らに支払い義務を課しているわけです。
会社によって支給方法や金額もさまざまです。通勤手当の上限額(月2万円までなど)がある会社も多いです。質問者の会社は先払いですが、後払いの会社もあります。例えば、フル勤務ではないパート社員は出社日数に応じて翌月払いが多いでしょう。
質問者は、通勤手当が不支給になるわけではありません。出社に必要な実際の通勤代より減額されるわけでもありませんので、譲歩が必要かと思います。
通勤手当が減ると社会保険料は安くなる
通勤手当は非課税(電車で月15万円まで)で、所得税はかかりません。でも社会保険料はかかるのです。手元に残らないお金で、経費のようなものなのになぜだろうと不思議に思います。基本給が同じでも遠方から通勤する社員は通勤費が高くなるので給与支給額は増えます。その分、社会保険料(雇用保険、厚生年金、健康保険料)は高くなり手取り額が減ります。
なかでも大きな負担が厚生年金と健康保険です。両保険で標準報酬月額の約30%を納めなければなりません。会社が半分負担してくれますので、約15%が本人負担で給与から天引きされます。これは大きな金額です。
標準報酬月額とは、毎年4月から6月に支給される給与(通勤手当含む)の平均になります。なお、標準報酬月額は一定の金額幅ごとに定められています。例えば、平均給与額が29万~31万円の場合は標準報酬月額を30万円として扱います。標準報酬月額の表はネットで参照できます。通勤手当の減少で標準報酬月額が下がれば社会保険料が安くなるということです。