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Q. IT企業に勤務するエンジニアです。転職のため、残っている有給休暇で退職前の1カ月間をまるまる休もうと思います。ところが上司は業務の引き継ぎが必要だと言って、私の休暇申請を拒否します。引き継ぐような業務もなく、嫌がらせとしか思えません。

 有給休暇を取得する権利は労働基準法で保護されています。社員は自由に有給休暇を取れます。ただ、社内で決められている申請期限などのルールは守る必要があります。例えば、1日の有給休暇は前日までに申し出ること、あるいは3日以上の有給休暇は2週間以上前までに申し出るなどのルールです。

 有給休暇において、上司が取得の許可を与えているようなイメージがありますが、間違いです。有給休暇は社員に取得する権利があり、上司が拒否できるものではありません。

 上司(会社)には、拒否ではなく、一定の条件を満たした場合に有給休暇を取得する日を変更する権利(時季変更権)があります。1カ月にわたって休むのなら業務の引き継ぎは気になるところですが、質問者は退職するので取得する時期を後ろにずらすことはできません。

時季変更権を使うハードルは高い

 時季変更権とは、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、取得する日を変更することができるというものです。プロジェクトメンバーの何人かが既に休暇予定で、代替要員がいなくて顧客の対応ができない場合や、あらかじめ命じていた研修受講や出張など特別な業務と重なる場合に使えます。

 どこで学んだ知識なのか、「会社には有給休暇の時季変更権があり、取得申請を却下(拒否)できる」と誤った発言をする上司がいます。こういった上司の部下は不幸としか言いようがありません。部下は上司を選べないのです。時季変更権を自由に行使できると誤解している上司がいるので、有給休暇の取得トラブルがなくなりません。

 上司が時季変更権を使うためのハードルは、実はものすごく高いのです。代替要員がいる、いないかの判断をする際、課長や係長クラスが困る程度では時季変更権は使えません。事業部長や部門長が調整しても代替要員を出せないようなレベルが必要だと考えてください。