Q.メーカー勤務のSE営業職です。関連企業への転籍出向を命じられました。給与や勤務条件は現状とほぼ同じです。会社は「異動の規程にも書いてあるので従ってほしい」と言います。嫌でも承諾するしかないのでしょうか。
異動の規程というのは、就業規則にある異動関係の条文のことでしょう。通常「転勤や出向、配置転換など異動を命ずることができる」と書いています。
筆者は顧客先への指導や企業研修を通して、数百社以上の就業規則を見てきました。異動のなかに「転籍」や「転籍出向」も加えている会社があります。質問者の会社も同様なのかもしれません。では、記載があるということで「転籍」を命令できるのでしょうか。
間違えないようにしたい「出向」の意味
転籍や転籍出向(以下、転籍)は、今の会社を辞めることになります。出向という表現から、また戻ってくるようなイメージがあるかもしれません。それは違います。
退職が伴わない出向は「在籍出向」のことです。勤めている会社の社員として、他の会社に勤めることになります。通常、出向と言えば在籍出向をイメージします。
転籍では、現在勤めている会社との雇用関係が終了します。転籍する会社で新たな雇用契約の下で働くことになります。
退職することになりますので、転勤や在籍出向、配置転換などの異動とわけが違います。会社が一方的に転籍(雇用の契約終了)を命ずることはできません。異動命令できるのは、転勤や在籍出向、配置転換などです。転籍には社員の同意が必要です。質問者の会社は、質問者の同意を得なければなりません。
「従ってほしい」という表現は、同意を求めているということです。質問者の年齢が分かりませんが、60歳の再雇用のときであれば転籍もあり得ます。
大企業における再雇用時の転籍
企業は65歳まで働ける環境を用意しなければなりませんが、従前の労働条件まで保証するものではありません。再雇用制度では、定年退職する日とほぼ同時に新たな労働条件で勤務することになります。いわば同じ会社に再就職したことになります。
大企業にはグループ会社がたくさんあります。会社にとっては、例えば社員を子会社へ転籍して、その子会社で65歳まで雇用するということでもよいのです。グループ会社の転籍元と転籍先の会社が密接な関係にあり、65歳まで雇用できる環境にあることが必要です。