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Q.IT企業に勤めている31歳のSEです。営業職の同期が係長に昇格しました。昨年も営業職の先輩が、通常より1年早く昇格しました。SEは営業職と比べて、昇格が遅いような気がします。顧客と長期にわたり一緒に苦労するのはSEなのに、不満です。

 昇格において、職種による差別的な選定はないと思います。ただ営業やSEに関係なく、組織ごとに昇格者の枠数が決まっていることがあります。昇格滞留者が多いと不利になる場合があります。特に課長(管理職)への昇格からはシビアです。現実には、人員構成による運もあるのです。

 経営に参画する役職になってくると、会社ごとに特色があるかもしれません。大企業なら執行役員がたくさんいます。顔を思い浮かべてください。営業やSEなどの職種、流通・製造・医療・公共系などの出身事業部別で昇格者を見てみると面白いかもしれません。

営業は目標・評価が一目瞭然

 人事評価についてよく顧客から相談されます。営業、技術、企画、スタッフなど会社にはさまざまな職種があります。

 評価するには目標が必要です。定量的な目標により、達成可否が一目瞭然です。例えば、受注や売上金額、既存顧客対応や新規顧客の開拓などの評価ポイントで、営業のほうが他の職種よりも定量的な目標を記載しているようです。

 SEやプログラマーの場合は、定量的な目標設定で悩むようです。例えば「納期通りに設計書を仕上げる」「バグを少なくする」というような目標設定シートを書く社員が多いと聞きます。「もっと定量的な目標を考えなさい」と言われたことはないでしょうか。プロジェクトを管理する役割であれば、原価や利益率で貢献度をアピールできるでしょう。

 しかし、プロジェクトもくせもので訳ありが存在します。見積もり通りの受注か、大幅値引きの訳ありプロジェクトかでスタート条件が違います。目標設定の前提を会社側と明確に共有しておくべきです。

 また、通常のプロジェクトよりトラブルシューティングで投入されたメンバーのほうが目立ちます。人は、直近で起こった良い点、悪い点で評価する傾向があります。問題プロジェクトのほうが記憶に残ります。そして、トラブルを起こしているプロジェクトに投入して気の毒だという加点もあるでしょう。

 こうしたメンバーに対しては一定程度、評価者の感覚での加点があるかと思います。評価者は感覚的な加点をなくし、営業やSEなどの職種に関係なく定量的評価での結果を重視すべきです。目標と評価結果は、矛盾なく運用されないと意味がありません。

ジョブ型雇用、目標と評価は明確に

 目標の達成度で給与や賞与額が決まっていけば、優秀な社員は仕事に対してめりはりを付けたり、やる気が湧いたりするかもしれません。プロ野球選手のように報酬を毎年契約するイメージです。会社にとって、給与を上げるのは簡単です。誰も文句は言いません。

 一方、優秀でない社員は会社から戦力外だと言われるかもしれません。そうなれば生活に困りますので、労働者(会社員など)は労働関係の法令や通達で守られています。例えば会社の解雇権は制限されています。合理的な理由がなければ、一方的な給与減額もできません。

 下げる場合は、明確な基準の人事制度が必要です。昔「役割給」という言葉が流行しました。今は「ジョブ型雇用」が注目されています。どちらも遂行する職務を明確化するもので、その職務や役割を担う給与額が規定されているという制度です。

 会社はただ制度をつくったと社内外でアピールして終わりではだめで、役割や職務と目標を連携させて、給与のグレードや職務給を変えないと意味がありません。「今年も能力目標設定の時期が来た」「今度は業績目標の設定だ」とおっくうに感じている社員が多いのは、慣習的になっているからです。

 社員は目標達成により、ある程度の昇給や昇格の未来像が描ければやる気が出ます。今以上に真剣に、評価の前提条件を考えて目標を設定するでしょう。質問者のように不満に思う社員も少なくなるかもしれません。