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Q.ITエンジニアです。会社で昇格するには、ITや業務系の国家資格を取得することが条件になっています。中級SEまで資格と経験年数のクリアでほぼ昇格できます。上級SEになるには資格以外の条件も重視されます。同僚のエンジニアは資格マニアで、その対象資格については取得済みですが、仕事ができず、よく叱られています。言い訳ですが、自分のほうが多忙で勉強する暇がないです。資格を必要とする昇格制度に矛盾を感じます。プロなので仕事の優劣だけで判断してほしいです。

 昇格において、資格を考慮している企業があります。IT企業では、IT系の国家資格やベンダー資格、中小企業診断士、技術士のほか、業務コンサルティングを軸とした税理士や社会保険労務士などが対象になっているようです。本稿では以下、総称してIT資格とします。

 質問者は、昇格にIT資格を必要とする制度の企業に勤めているのです。まずは社内で高いランク評価のIT資格を取ってください。多忙でも、高度なIT資格のほか、中小企業診断士なども取得している友人や知人が筆者にはたくさんいます。質問者の周りにも、見習いたいと思える同僚や先輩はいるはずです。

 なお士業資格は通常、登録が必要なので試験に受かっただけではそう名乗れません。「○○士」ではなく「○○士資格取得」といった名刺を見かけるのはそのためです。

IT資格は「認定資格」

 資格には2種類あります。仕事に絶対必要な「免許資格」と、そうではない「認定資格」です。免許資格は、採用時から基本給や資格手当など給与面で優遇されています。例えばドラッグストアに勤める薬剤師が該当します。

 一方、IT資格は認定資格になります。資格がなくても仕事はできますが、保有していれば、対外的に専門的スキルを有しているという証明になります。社内独自の認定試験制度を設けている企業もあります。

 IT資格は社外でも通用します。IT業界で生きていくなら取得しておくべきです。転職時はアピール材料になります。

 「資格と仕事のスキルは一致しない」「仕事上、必要性を感じないから勉強する気がしない」といった話を聞くことがあります。そのような意見を聞くと、筆者はとても冷めてしまいます。資格を持っていない愚痴や、昇格できない言い訳にしか聞こえないからです。

 質問者は、資格が必要だとする会社に勤務しているのです。その土俵で勝負していかなければなりません。

公平になるように昇格制度の設計を

 会社からすると、IT資格は昇格への必要条件として活用できます。そのためには具体的な昇格条件を明確にしておく必要があります(ここでいう昇格は、役職ではなく、給与資格が上がるという意味で使っています)。例えば、SEで初級B職から初級A職になるときは基本情報技術者の資格以上、中級職になるには応用情報技術者以上の資格が必要といった条件です。

 昭和の大部分の期間にわたり、IT国家資格は特種/第一種/第二種の情報処理技術者試験だけでした。その後ずいぶん多様化し増えたものです。資格の分類と昇格の関係表をつくるのは大変ですが、会社は、社員に公平になるよう制度設計をしなければなりません。