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Q.ITエンジニア志望で就職活動をしている大学生です。某IT企業から内々定通知書をいただきました。承諾書が同封されていて、「正当な理由なく入社を拒否できない」という文章があります。これを提出すると他のIT企業への就職活動はできないのでしょうか。

 IT企業に勤める知人たちが管理する部門やプロジェクトでは、エンジニア不足だといいます。協力会社のシステムエンジニアは出払っていて補充人員が見つからず、残業でカバーするしかない状況があるとのことでした。請負で発注するプログラマーを確保するのにも苦労しているようです。システム開発の対象業務、会社や所属する事業部による違いはあっても、総じてIT企業では人手不足なのかもしれません。

 会社は、ITエンジニアの要員数や年齢別人員構成、経営計画や経営状況を考慮して採用計画を立てます。特に新卒採用は募集から会社説明会や採用面接、選考と時間をかけています。時間をかけて選考した結果、自社のエンジニアとして活躍を期待する学生に通知を出しています。

内々定通知と内定通知の違いは

 夏ごろに「選考の結果、採用することを内々定いたしました」という通知文に「活躍を期待しています」「入社を楽しみにしています」といった言葉が添えられて届くものが内々定通知になります。質問者にはその内々定通知書が届いたわけです。一方、10月以降に届くのが内定通知です。「採用(内定)通知」と表記している会社もあります。

 内々定通知や内定通知の方法は会社によって異なります。郵送やメールのほか、Webサイト上での通知などがあります。内々定通知は、採用する予定だという会社からの連絡です。内々定の連絡をした以上は、会社は採用するように努めなければならない責任があります。

 内々定通知では通知書による連絡のみで、承諾書などの返送を求めない会社はたくさんあります。質問者は内々定承諾書の提出を求められていますが、その承諾書に拘束力はありません。通知内容や採用予定に対して理解したという意味合いのものだと考えてください。質問者は、他のIT企業への就職活動を継続できます。

 ただ、会社が採用予定者になるべく辞退を避けてほしいと考えるのは当然です。質問者は、「入社を拒否できない」という強い表現の文章に驚いたのかもしれません。

 内々定の段階で、学生に就職活動を継続させないように強いプレッシャーをかけるのはいただけません。言葉は選んでほしいと思います。また、内々定通知を口頭連絡で済ませる会社があるようですが、文面での通知がよいです。確証が残るので学生に安心感を与えるからです。