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Q.IT企業の人事部に勤務するマネジャーです。当社では、ITエンジニアの社員と役員との意見交換会があります。社員から「賞与は評価と支給時期に間隔があり、業績と連動しているのか分かりにくい」という意見がありました。賞与支給後に同様の不満を上司へ訴える社員も毎年います。四半期ごとの賞与支給は可能なのか検討してほしいと役員から指示がありました。年2回の賞与より4回のほうが、業績連動しているという意識が社員に高まるのではないかということです。

 筆者も同意見です。実現するには、課題も当然あります。結果的に見送りとなるかもしれませんが、四半期ごとの賞与支給を検討する価値はあります。

業績と直近する評価は明快

 賞与は通常、夏と冬の年2回です。上期の業績評価を基にして冬に、下期の業績考課を基にして夏に支給します。

 業績評価では、評価者(上司)は直近の業績ほど重視してしまいがちです。記憶に新しいからです。特に直近で、会社や事業部内で目立ったITエンジニアの評価は甘くなります。

 例えば、大きなシステムトラブルの渦中に火消し役を期待され結果としてトラブルを収めた、顧客から大きなシステム開発の案件を受注した、顧客から感謝の連絡が役員や本部長にあったなど、目立ったパフォーマンスは上司の記憶に鮮明です。直近で功績を残したほうが、評価は高くなる傾向にあります。

 年2回より4回のほうが評価間隔は短くなり、個々の社員の業績は上司の記憶に残りやすいので、公平な評価連動に近づきます。評価結果から、お金(賞与)になる間隔が縮めば、今までより評価連動の現実感は増します。

 質問者の会社役員が言う、「年2回の賞与より4回のほうが、業績連動しているという意識が社員に高まるのではないか」という指摘は、筆者もその通りだと思います。

 年4回賞与の運用とする場合、前準備で必要なことがあります。それは、就業規則に、四半期ごとの賞与支給とする旨の記載です。賃金規程や給与規程など別冊にしている会社もあります。記載することで、年4回の賞与を支給する会社だと認識されます。年金事務所による社会保険調査では、就業規則の該当ページを確認するはずです。

給与計算パッケージはほぼ非対応

 さて、「年4回の賞与」実現を考えたときに、どのようなシステム上の課題があるのでしょうか。それは、給与計算パッケージが年4回の賞与支給に対応していないことです。筆者が知る限りのパッケージにおいて、対応する標準機能はありません。年4回賞与の会社は非常に少ないためです。質問者の会社が使用しているパッケージのベンダーに問い合わせても、手作業主体の回避策か、対応していないという回答になるはずです。

 四半期ごとの賞与支給では、賞与からの社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の控除はなくなります。社会保険料を支払わなくてよいのではありません。毎月の給与から控除されている社会保険料に加算する運用に変わります。

 大企業になるほど、多くの機能をシステムに求めます。自社の運用に合わない、あるいは足りない機能についてはアドオン開発します。同じように、年4回対応の機能を追加することも可能です。システム開発については、自社がIT企業なので得意とするところでしょう。

 システム上の課題のほかに、社員の負担になるという面もあります。業績評価の回数が年2回から4回に増えるので、評価期間が短くなり時間的に厳しいという意見です。

 この話に限りません。制度や運用を変えようとするときには、ネガティブ思考で初めから反対する社員がいます。定量的評価を中心にするなどで、評価期間を短くできるのではというように前向きな発想での意見交換をしてほしいと思います。